木バス通信No.7から 燃料争奪戦の開始と憂い
燃料争奪戦の開始と憂い
共同代表 今村 輝夫
私の日課は、高校生の孫を八重原から田中駅南口までの送迎から始まる。朝、電車に
乗り遅れないようにとあせる気持ちを抑えて安全運転に努めて木戸坂を下るが、必ず木
バス発電所の煙突を見てしまう。冬の訪れと共に、煙突からの白煙がはっきりと見える
ようになって来た。旧東部町の皆さんも「今朝は冷えるね」の挨拶と共に、見えなかっ
た発電所の実像がしだいに目の前に現れて来たと感じているでしょう。
燃料は松枯れ材が主体で、乾燥木をチップ化して強制燃焼し吐き出す為、水蒸気が見
えず実像が見えなかったが、気温が下がり、発電所の実像があらわになってきた。真冬
はあの煙が北風と共に八重原に向かって来る。あの白い煙が放射能を含んでいることを
忘れてはならない。現時点では「長野県東信地区の間伐木材を燃料とする」と、市もW
P社も明言している。
10月15日の信毎の記事で不安が高まった、「Fパワー発電所きょう始動」の見出しで
1/5ページと大きく紙面を割いた報道である。塩尻市に完成し稼働を始めた民間出資の
国内最大級の木質バイオマス発電所の記事だ。主に建築角材の端材を燃料として、製材
と買取電力料金で採算の計画で有ったが、記事の内容は、発電能力・地域貢献の記事よ
りも、その規模を維持充足できるかの燃料問題であった。
記事の大半は林業関係者の談話で、安定供給に不安と問題が大きいという。社長のイ
ンタビューでも「現時点では心配ない。しかし松枯れ材でも使っていく」と明言してい
る。話が違うではないか!
東御市のWP社(2年前では清水建設)の事前調査の議事録が残っており、塩尻発電
所の計画は承知の上で、塩尻発電所は「建材とならない松枯れ材は使わない。どうぞ東
御で使ってくださいと言っている。ひとまず安心」と記録が残っている。新聞記事での
「Fパワー社も松枯れ材も利用する」との明言は、事実上の燃料争奪戦の戦線布告であ
る。
11月15日の週、朝5時のNHKニュースで「福島県双葉町の森林組合が、9年ぶりに
活動を再開する、しかし、まだ組合管理の森林の半分以上の面積では、放射線濃度が高
く立ち入れないが活動を再開した」とニュースが流れ、不安がよぎった。
今年、2月福島県郡山市の学習会に参加した時、東京電力は山林の汚染補償までは出来
ないと逃げている、福島県始め原発汚染地域の山林は放置され、手づかずのままであ
る。森林組合は、先祖が孫子の代にと、100年育てた杉、ヒノキなど建築材が一瞬に
して、ゴミとなった、皮肉にもまだ育ち続けている、森林組合は怒り心頭、その絶望感
は痛いほど理解できる、何とか金にできないかと考えるのも理解できる。国は、「バイ
オマス発電の燃料として、高く買い取る」となだめているらしい。
子供たちの為にも、「風化させてはならない」「戦いを続けなければならない」と弱
る老体に言い聞かせた。