木質バイオマス発電

信州の 山なみ見わたす 陽だまりの町・東御市、ここに木質火力発電所ができるって?!

木バスサロン、始めました!

 第一回木バスサロンを8月21日に東御市公民館にて行いました。 

  一回目は、「森林バイオマス燃焼による排出の影響」と「炭素会計のトリック」について考える学習会として、映画【BURNED : Are Trees the New coal?】(「燃やされる-木が石炭の代替燃料に?)(youtube.com/watch?v=fzQxLj9i4Q4) を、集まった会員たちで観ました。

 

 再生可能エネルギーのひとつとして位置付けられている木質バイオマス発電は、メガソーラーなどの問題が浮上し、太陽光発電に対する期待が低落する中、設備的安定性を持ち、FIT制度(固定価格買取制度)に支えられて売上価格も安定しているし、かつ「カーボンニュートラルだから環境にもグリーン」というふれこみが信じられ、世界的にも急増しています。

 木質燃料はこれまでも石炭との混焼に使われてきました。石炭も木質も燃焼してエネルギーを得る「火力発電」なので、そのインフラはほぼ同じです。世界的に化石燃料の評判が悪くなっている現在、今後、木質が石炭の代替燃料として、さらに増えていくことが予想されます。「カーボンニュートラルだから気候変動対策にもなる」ということで、バイオマスには各種の補助金がつくので、企業にとっては大変おいしい分野なのです。

 現に、日本のFIT法の買取価格も2017年に改正され、かつて太陽光発電の買取価格であった40円/kwが、現在は、間伐材由来燃料で、かつ2000kw未満ならばという条件つきで、木質バイオマス発電の買取価格となっています。

 アメリカやカナダ、エストニアルーマニア、東南アジアなどの森林がどんどん伐採され、ヨーロッパの木質バイオマス発電の燃料として運ばれ、海上では輸送船のラッシュまで起こっている。現在世界中に3600ヶ所ある木バス発電所がこのままの調子で増えていき、5700ヶ所になると、世界中の森林が消えてなくなるだろうと、映画は警告しています。

 果たして木質バイオマス発電は、本当にカーボンニュートラルなのでしょうか。木材を燃焼して、二酸化炭素が出ないわけがないと思うのですが。そんな一般市民の素朴な疑問に、映画『BURNED』は答えてくれます。

 この映画はアメリカの市民グループが制作しました。その中心的グループ『政策の完全性に向けたパートナーシップ』PFPI (Partnership for Policy Integrity) のリーダーは映画にも登場するメアリー・ブース博士です。

 メアリー・ブース博士は生態系科学者としての教育を受け、2010年にPFPIを設立し、バイオマスエネルギーの影響について取り組んでいます。(www.pfpi.net)

 2019年には、森林バイオマスを「ゼロカーボン」とみなしているEUに対し、バイオエネルギー訴訟を起こしています。(www.eubiomasscase.org)

 

バイオマス発電の炭素会計の落とし穴】

  「伐採時と燃焼時の両方で炭素計算すると、二重に計上することになるから」という理由で、バイオマス燃焼時には、二酸化炭素をカウントしないというルール(IPCCの決めたルール)があります。でも、実際には、森林伐採時、燃焼時のどちらでもカウントしていない、報告していないということが起こっており、木質バイオマスは、炭素計算上は「ゼロ」として報告されているそうです。

 

気候変動に関する政府間パネルIPCC) の決めたルール】

 IPCCは、バイオマス収穫による森林炭素の損失を「土地利用セクター」において計上するので、「エネルギーセクター」については、二重計上を避けるためにバイオマス由来のCO2をゼロとして計上するというアプローチを推奨しているのだそうです。

 つまり、気候変動の主な理由をCO2の排出量と考えるIPCCは、その排出がどこで行われるかを問題にします。炭素を安定的に貯蔵している森林が伐採されるとその段階で炭素が排出され、さらに炭素の吸収源を失うと考え(「土地セクター」でのマイナス)、実際の燃焼時の「エネルギーセクター」では、炭素の排出量を計上しないというルールを設けたのです。

  ただし、IPCCは次のようなコメントも出しています。「エネルギーセクターの合計にバイオエネルギー排出量を含めないというIPCCのアプローチは、バイオエネルギーの持続可能性または炭素中立(カーボンニュートラル)に関する結論として解釈されるべきではない。」(http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/faq/faq.html)

  つまり、「CO2排出権に係る炭素計算上は、二重計上を避けるために、エネルギーセクター=燃焼時では計上しないが、実際は燃焼時にCO2は排出されている。だから、持続可能性または炭素中立(カーボンニュートラル)に関する結論として解釈してはいけない」とも警告しているわけです。

 でも、この警告をどれだけの市民が理解できるでしょうか。金融上、炭素会計上の「ゼロカーボン」と、実際上の「ゼロカーボン」をごっちゃにして、バイオマスカーボンニュートラル再生可能エネルギーでグリーン」というイメージが先行し、また政治的、政策的にもそのイメージが利用されていっているのが現状だと思います。

 

バイオマスからの大気汚染排出】

 バイオマスの燃焼によるCO2の排出量は、石炭バーナーの150%、天然ガス設備の300~400%にも上ると、IPCCのホームページには書かれていますが、大気汚染に関するページを見ると、天然ガスよりも大気汚染度が高く、石炭に類似しているということがわかります。

 有機物を燃焼すると、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、二酸化硫黄(SO2)、鉛、水銀、およびその他の有害な大気汚染物質(HAP)が放出されます。

 木は長年、地中の重金属等有害物質を吸い上げており、また、2011年の原発事故以降は、森林は放射性物質のプルーム(雲)を被っているので、大気からの降り注ぎの他、その後の土壌中からの放射性物質の吸い上げもあるはずです。

 日本学術会議の2014年報告書には、「チェルノブイリの知見によると、立木の中に蓄積された放射性物質の量は、事故後10~20年後にピークを迎える」と書かれており、事故後9年半経つ現在、立木の放射性物質の量は、これからがピーク期に入ると予想されます。

 立木の放射性物質の基準量は、日本では設けられていません。燃焼を前提とする「薪」に40Bq/kg、「木炭」に280Bq/kgがあるのみです。

 木は燃焼すると、含まれる放射性物質は、100~200倍に濃縮されます。この濃縮された放射性物質が、主灰(燃え殻)と飛灰に含まれることになります。

 そして飛灰の放射性物質は、PM1レベルの放射性微粒子になって、バグフィルターを

すり抜け、大気中に排出され、浮遊することになります。

 

 IPCCのホームページの2020年5月12日公開のページ、『EU バイオマス訴訟、裁判所へのアクセス拒否』には、「訴訟が提起されて以来、バイオマス産業が与えた被害の追加の証拠が明らかになりました。米国だけでなく、ブリティッシュコロンビアの内陸の熱帯雨林エストニアルーマニアカルパティア山脈でも、木質ペレットの古い成長を記録したという新しい報告がでました。木材燃焼発電所によるものを含む大気汚染が、Covid-19への感受性を劇的に高め、・・・・」という文章があります。

  コロナウィルス、Covid-19は、肺へのダメージが大きいと言われていますので、コロナウィルスの流行がひどくなっている現在、火力発電所、クリーンセンターからの大気排出物には、ますます気を付けていかねばなりません。

 

 7月15日に本格稼働した東御市の木質バイオマス発電所の煙は、日夜、建物の陰に隠れた煙突から排出されています。

 『木質バイオマス発電チェック市民会議』は、大気の状況、排水の状況、騒音や悪臭、焼却灰の状況に関して、監視活動を継続していきます。