木質バイオマス発電

信州の 山なみ見わたす 陽だまりの町・東御市、ここに木質火力発電所ができるって?!

第4回木バスサロン 低線量内部被曝について学ぶ

 11月27日、今年最後の木バスサロンでの学習を「低線量内部被曝」をテーマにして

いました。

 以下、その概略です。  

 

 放射線ガンマ線(~数百メートル)ベータ線(~1メートル)アルファ線(~45ミ

リメートル)などがある。身体の外から瞬時に高線量の放射線を浴びてDNAがズタズタ

に破壊されるのが外部被曝であり、ほぼガンマ線による被曝である。それに比べ放射性

微粒子を食物や呼吸とともに体の中に取り入れてしまい、細胞が至近距離で継続して放

射線に直撃されるのが、内部被曝。3種類の放射線を体内で出し、当り続けるので外部

被曝よりずっと大きな被曝被害をもたらす。

 内部被曝でのベータ線アルファ線による分子切断では、間違ったつなぎ直しが起き

数年かかり体調不良に陥る危険性が外部被曝の100~1000倍ともいわれる。低線

放射線が慢性的に細胞に当たり続けると、非常に少量の放射線の吸収であっても免疫

系全体に障害を与えるので、内部被曝の方がはるかに危険であるとする、ペトカウ効

果、バイスタンダー効果などもある。

 チェルノブイリ原発事故のデータなどからも放射線にここまでなら安全というしきい

値はない

 

 低線量被曝の基本的なことを学んだ後、放射能被曝に関する紙芝居の紹介がありまし

た。

 「ちっちゃい声」  作 アーサー・ビナード  絵 丸木位里・俊 

 

【 参 考 】

 1973年から始まった原爆症認定却下取消訴訟の中で、日本で初めて入市被爆者を原爆

症と認定したのは、2008年の大阪高裁です。ここで、重要なことは、放射線の高線量被

曝と低線量被曝が及ぼす影響は異なっており、残留放射線による低線量放射線の内部被

曝は非常に危険なものだと、判決文の中で指摘していることです。

 

阪高裁判決文より抜粋(判決文311頁から313頁) 

平成20年5月30日判決言渡

平成18年(行コ)第58号 原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件

 

4.低線量放射線による被曝の影響に関する指摘

 (1) ドネルW.ボードマンの指摘(1992年)

 ケンブリッジ及びマサチューセッツの原子放射線研究センターのドネルW.ボードマン

は、著書放射線の衝撃 低線量放射線の人間への影響(被爆者医療の手引き)(肥田

舜太郎訳)において、以下の指摘をしている。

        略

(2) ジェイM.グールドらの指摘(1994年)

 「放射線と公衆衛生に関する研究計画」の責任者であるジェイ M. グールドとベンジ

ャミンA.ゴルドマンは、共著「死にいたる虚構 国家による低線量放射線の隠蔽」

(1994肥田舜太郎ほか訳)において、以下のような指摘をしている。

 

   広島原爆の経験に基づく高線量域から外挿した(機械的に当てはめた)線量反応関係

(被曝量の増加に応じて、被害が増加する相関性)に基づいて、フォールアウト(放射

性降下物)や原子力施設の放射能漏れによる低線量の危険は極端に過小評価され無視す

ることができるほど小さいと信じられてきた。しかし、医療被曝や原爆爆発のような高

線量瞬間被曝の影響は、まず最初に、細胞中のDNAに向けられ、その障害は酵素によっ

て効果的に修復されるが、この過程は、極低線量での障害に主として関与するフリーラ

ジカル(遊離基)の間接的、免疫障害的な機序とは全く異なっている。このことはチェ

ルノブイリ原発の事故後のミルク中のヨウ素131被曝による死亡率が、ヨウ素131のレベ

ルが100pCi以下で急激に上昇しているのに、高線量レベルになると増加率が平坦になっ

てしまうことから裏付けられた。チェルノブイリの経験から言えば、この過程は最も感

受性のある人々に対する低線量被曝の影響を1000分の1に過少評価していることを示し

ている。

 チェルノブイリ事故以後の健康統計から計算すれば、低線量の線量反応曲線は、低線

量域で急峻なカーブの立ち上がりを示す上方に凸の曲線又は対数曲線であり、線量反応

関係の対数カーブは、ペトカウ博士らが行った1971年の放射性誘発フリーラジカルの細

胞膜障害の実験結果と一致する。低線量放射線による慢性的な被曝は、同時には、ほん

のわずかなフリーラジカルが作られるだけであり、これらのフリーラジカルは血液細胞

の細胞膜に非常に効率よく到達し、透過する。そして、非常に少量の放射線の吸収にも

かかわらず、免疫系全体の統合性に障害を与える。それと対照的に、瞬間的で強い放射

線被曝は、大量のフリーラジカルを生成し、そのためぶつかり合って、無害な普通の酸

素分子になってしまうため、かえって細胞膜への障害は少ない。

 チャールス・ワルドレンと共同研究者たちも、極めて低い線量の放射線の場合、高線

量を用いた通常の方法やエックス線装置からの瞬間照射の場合よりも200倍も効果的に

突然変異が生じることを発見した(体内摂取されたベータ線による持続的な被曝は、外

部からのエックス線瞬間被曝に比べて細胞膜への障害が千倍も強い)。彼らのデータ

は、線量反応曲線は直線であり、低線量の影響についても高線量のデータによる直線の

延長線上で評価できるとしてきた伝統的な化学的ドグマと対立している。

 ストロンチウム90は、化学的にはカルシウムに似ているため、成長する乳幼児、小

児、思春期の男女の骨髄の中に濃縮される。一度骨中に入ると、免疫担当細胞が作られ

る骨髄に対し、低線量で何年にもわたって放射線を照射し続ける。ストック博士と彼の

協力者は、1968年、オスローがん病院で、わずか10~20mradの少線量のエックス線が

おそらくフリーラジカル酸素の産生を通じて骨髄造血細胞にはっきりした障害を作り出

すことを初めて発見した。このことが、直接的には遺伝子を傷つけ、間接的にはがん細

胞を見つけて殺す免疫の機能を弱め、骨肉腫、白血病その他の悪性腫瘍の発育を導く。

 ストロンチウム90などによる体内ベータ線被曝で最も効率よく生産されるフリーラジ

カル酸素は、低比重コレステロールを酸化して動脈に沈着しやすくし血流を阻害して心

臓発作を誘導すると考えられており、発がん性と同様に冠動脈性心疾患の一要因なのか

もしれない。   

 

(参考文献:「放射線の衝撃 低線量放射線の人間への影響」訳者 肥田舜太郎

「死にいたる虚構 国家による低線量放射線の隠蔽」肥田舜太郎、斉藤紀 共訳  

 PKO法「雑則」を広める会 発行)