木質バイオマス発電

信州の 山なみ見わたす 陽だまりの町・東御市、ここに木質火力発電所ができるって?!

世界中の科学者がバイオマス発電を批判!

   書簡「森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」について、
森林ジャーナリストの田中淳夫氏が、ブログで以下のようなコメントを出しました。
 
  最近いらだつのは、フェイクニュースを元に政策がつくられていると感じるときだ。

   国際環境NGOのFOEjapanが、ブログで「500名以上の科学者が日本政府に書簡を提出:森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」を公表した。

  内容は、42の国と地域の500名を超える科学者が、日本のほかアメリカ、EU、韓国に対し「木質バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」と主張する書簡を提出(アメリカ時間の2月11日)したというもの。バイオマス発電のために森林が伐採されていること、森林の再生には時間がかかり、数十年から数百年にわたって気候変動を悪化させること、バイオマスの発電利用は化石燃料を使用した場合の2〜3倍の炭素を放出する可能性があること……などを指摘している。

  詳しくは本文を読んでいただければと思うが、実は以前から指摘されてきたことだ。そして、その内容は、あまりにも当たり前すぎるもの。だいたい燃やすために森林を伐採して、どこが「地球温暖化防止」対策なのだ。とくに日本はバイオマス発電燃料の過半を輸入している(国内の燃料も遠方から運んでいる)うえ、発電だけで熱利用をせずエネルギーの半分以上を捨てている点でも、欧米以上にたちが悪い。

  科学者が真摯に突きつけた提言に目を通しても「バイオマス発電は再生可能エネルギーで、地球環境をよくします」と平気で口にする役人や学者は、単なるバカか、あるいは見て見ぬふりをする嘘つきだ。

  まだある。政府は森林間伐等実施促進特別措置法の改正案閣議決定した。同法は市町村の計画に基づいて行う間伐を支援するものだが、2020年度末で期限が切れるため、30年度まで延長するよう改正するものだ。
  そこでは地球温暖化対策計画で、21年度から30年度で年間の間伐面積を45万ヘクタール行うための補助金を出すと記されている。これがかなり噴飯もの。

  そもそも間伐したら、なぜ二酸化炭素の排出が減る(=地球温暖化が止まる)のか、本気で説明してほしい。科学的でないだろう。だって、間伐というのは木を抜き伐りすることだが、炭素を蓄えた樹木の本数を減らすことが、なぜ二酸化炭素削減になるのか? 伐られた木を燃やしたり腐らすことで、逆に放出しかねないではないか。仮に木材として利用しても、歩留りは半分以下だ。

  残した木は、周辺の木がなくなることで日当たりなどがよくなることでよく生長し、二酸化炭素をよく吸収する……というのも子供だまし的な説明だろう。たしかに開いた空間に枝葉を伸ばし少しは幹を太らせるかもしれないが、それも間伐された木の分だけしか生長しない。何年も経って、ようやく間伐前の吸収量に近づくだけで、以前より多くなることは有り得ない。一定の森林空間で生長するバイオマス量は一定、というのは森林学の常識だ。(間伐するな、というのではない。間伐の役割は別にある。間伐が二酸化炭素の吸収を増やすという説明が嘘だ、と指摘しているのだ。)

  ついでに言えば、若い木の方が老木より二酸化炭素の吸収も多いというのも怪しい。ネイチャー論文を少しは読んだらどうか。拙文でも指摘した。「老木ほど生長する!」
  ちなみに日本の林政では、スギを50年で老木扱いして「伐期だ、早く伐れ」と補助金をばらまいて皆伐を推進する。だがスギの寿命は屋久杉など特別なものを除いても、200~300年は優に生きる。50~60は鼻ったれ、というか若木だ。どんなに少なめに見ても100年生ぐらいでなければ生長が落ち着いたと言えないだろう。

  こうして世の中、嘘と過ちの情報を元に政策が推進されているんだなあ、と絶望的な気分になるのである。

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