リネン吸着法検査の現場から
チェック市民会議では、木質バイオマス発電所の稼働前から、リネン吸着法検査を行
っていますが、2020年7月に稼働してしまった木質バイオマス発電所の稼働後初のリネ
ン吸着法検査を、11月から開始しました。
そのときの様子をリネンチームメンバーが書いて、ちくりん舎に送り、記事にしてい
ただきました。
稼働後のリネン吸着法調査を始めました
リネンチ―ム・メンバー
2021年1月1日、初日の出を見ようとカーテンを開けた私の目に入ったのは、千曲川を
挟んだ対岸の木質バイオマス発電所からもくもくと立ち上る白い煙?(水蒸気?)でし
た。お正月もやっぱり休まないんだ・・・
東御市の木質バイオマス発電所は2020年7月15日稼働を開始しました。当初煙らしき
ものは何も見えず、私たち木質バイオマス発電チェック市民会議のメンバーも「本当に
始まっているの?」と、何度も現場をのぞきに行ったものでした。冬になり気温が下が
ると毎日もくもくと見え、見るたびにどうしてこんなものができてしまったのだろうと
心が痛くなっています。
私たちは2019年の11月から翌年2月の3か月間、稼働前のリネン吸着法調査を行い、デ
ータを集めました。比較するならやはり同じ時期にということで、2020年11月から3か
月間調査中です。
リネン調査はちくりん舎の青木さんにご指導いただきながら、全部で10か所行ってい
ます。発電所のふもとの1か所を中心に、3方向に1キロ、2キロ、4キロの地点にリネン
布を張りました。千曲川を挟んだ河岸段丘の東御市。風の流れも川に影響されるだろう
ことを見越しての場所になっています。
と、書けばなかなか計画的にスムーズにいったように思われますが、実際はおっとど
っこい・・・な感じで、進みました。1回目に実施した時の写真を見て「リネンの高さ
が低すぎます。4メートル以上ないと下からのまき上げの影響を受けてしまう」と青木
さんから連絡がありました。「これは大変!」4メートルって、結構な高さです。各場
所、設置する角材を買ってきたり、野菜の支柱をつなげて高くしてみたり。そして、そ
こで私たち仲間から出てきた話が「4隅を止めると巻き付かなくていい」でした。「な
るほど! 高くして4隅を止めて、完璧!」ところが、その写真を見た青木さんからまた
ダメ出し。「リネンの下を止めてしまうと、ブラウン運動をうまく拾えない。外してく
ださい」「でも、下のひもを長くしてはためくようにしたものは、まあいいでしょう」
ということで許可をいただき、やっとこさという感じで設置できました。
チェック市民会議の活動としてはこの他、とてもフットワークのいい仲間が毎日のよ
うに市の生活環境課に足を運び説明し訴えてくれたおかげで、市として灰の放射能検査
を毎月してホームページにアップしてくれるようになりました。とても大きな成果だと
思います。また、木バスのこと、放射能のことなど、少しでも多くの人に知ってもらえ
るよう、自分たちも学べるよう、月1回勉強会を開くということにしました。その名も
「木バスサロン」。昨年の8月から始めて4回行いました。テーマだけ紹介すると、第
1回「森林バイオマスってカーボンニュートラル?」 第2回「福島・宮城・北海道の木
バス発電所見学報告」 第3回「リネン吸着法って、すごい!」 第4回「低線量内部被
曝」です。コロナ渦で人数制限がある中、毎回上限の20名近くの方が集まってくれまし
た。いつも教えてもらっているばかりでなく、自分で資料を読み、まとめ、発表すると
いう経験が自身の理解を深めてくれていることにも気づかされました。その他、文章や
パソコンが得意な仲間はブログに活動状況などをアップしたり、ニュースを作って発行
したり広報活動も頑張っています。とても心強い仲間は足を使って歩き、語り、活動に
必要なカンパを集めてきてくれます。そして発電所の本当に近くに住んでいる方たちの
熱い思いは、何よりも私の心を動かします。
リネン吸着法調査の経費は「市に出してもらえば?」という人もいますが、私たち市民が自ら検査することが大事だと、チェック市民会議のメンバーは考えています。
ひらひらとはためくリネンは「私たちは見ています! チェックしています!」と訴え
てもいるのです。
この先何年木バスが稼働し、私たちの活動も何年続くのか、わかりません。時にはく
じけそうになる気持ちを、仲間に奮い立たせてもらいながら頑張っていきたいと思って
います。大好きな東御市のために。未来ある子供たちのために。
ちくりん舎ニュース No.25 2021.1.28 より転載
放射能汚染の「見える化」のために
ちくりん舎による「ハウスダストのセシウム濃度測定による放射能汚染調査」
NPO法人市民放射能監視センター(ちくりん舎)は、原発事故10年後の放射能汚染の
実態を「見える化」するために、福島県内外の家庭153ヵ所のハウスダストのセシウム
濃度測定を行いました。
今回の調査では参考として浪江町の帰還困難区域の3ヶ所の屋内と、南相馬・避難20
ミリシーベルト基準撤回裁判原告の家屋のハウスダストを測定し、東日本各地のハウス
ダストと比較することを行いました。
私たち「木質バイオマス発電チェック市民会議」にも、長野県東信地方のハウスダス
トを調査したいという依頼があり、12ヶ所の家庭の掃除機のゴミパックをちくりん舎に
送り、調査に協力しました。153件全部の調査結果がちくりん舎のホームページでご覧
になれますので、ぜひ、のぞいて下さい。(http://chikurin.org/wp/?5982)
今回の調査では、当然人が住んではいけないとされている帰還困難地域と同等のレベ
ルの汚染が、南相馬市や飯館村にもあることがわかりました。ハウスダストが、一般ご
みとして廃棄してはいけない指定廃棄物(8000Bq/kg以上)に相当する家が5ヶ所、放射
性物質のリサイクル基準(放射性物質として扱わなくてよい基準、100Bq/kg以下)以上
の場所が福島県、新潟県、宮城県、茨城県、千葉県、東京都で発見されました。
また、ちくりん舎ではセシウムの水溶性試験も行い、ハウスダスト中のセシウムのう
ち75%程度が非水溶性であることも突き止めました。ハウスダストは屋内の空気に浮か
んでいる細かいチリなので、吸い込むと肺の奥に沈着し、非水溶性であると肺内部から
排出されづらく、長期に渡り内部被ばくすることになります。
ハウスダストや南相馬市住民の尿検査結果とその分析、中間貯蔵施設見学などを載せ
た「福島原発事故10年の現実 ~ 続く汚染と内部被ばく 放射能ばらまきを止めるため
に」という新しいブックレットも出ました。
世界中の科学者がバイオマス発電を批判!
第2回放射能ごみ焼却と木質バイオマス発電を考えるオンラインシンポジウム
3月6日、第二回オンラインシンポジウムは、3時間を超える長丁場と
なりました。
ぜひ、ご覧下さい。
書簡「森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」
書簡では、バイオマスの発電利用により森林が伐採され、森林に蓄えられている炭素が大気中に放出されること、森林の再生には時間がかかり、数十年から数百年にわたって気候変動を悪化させること、バイオマスの発電利用は化石燃料を使用した場合の2〜3倍の炭素を放出する可能性があることが指摘されています。また、各国政府は「気候変動対策」として、バイオマスを燃焼することに対する補助金やインセンティブにより、実際は気候変動を悪化させていること、そして真の排出削減のためには、森林を燃やすのではなく、保全と再生に努めるべきことが述べられています。
日本では、2012年にFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が開始されて以降国内のバイオマス発電事業が急増しています。
FIT認定量は、2020年9月には821.5万kWで、そのうち747万kWが一般木質バイオマスおよび農作物残さ(輸入木質ペレット・木質チップ、PKSなど)やバイオマス液体燃料(パーム油など)による発電となっています。同時点で、FIT制度下で稼働している発電事業数は446件、認定されている事業数は709件にのぼります。
大規模バイオマス発電事業は、輸入燃料に頼っています。例えば木質ペレットの輸入量は、2012年には約7.2万トンでしたが、2019年には161.4万トンに急増しています。
書簡は、日本のFIT制度について「日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要がある」と言及しています。
以下、日本語の仮訳です(原文はこちら)。
森林のバイオマスエネルギー利用に関する書簡<仮訳>
2021年2月11日
米国大統領 バイデン様、
欧州委員会委員長 フォン・デア・ライエン様、
欧州理事会議長 ミシェル様、
日本国内閣総理大臣 菅様、
大韓民国大統領 文様
下記に署名した科学者および経済学者は、米国、欧州連合、日本、韓国が、2050年までにカーボンニュートラルを達成するために野心的な目標を発表したことに称賛の意を表します。森林の保全と再生こそが、この目標を達成するための重要な手段であり、同時に地球規模の生物多様性の危機への対処に役立つものです。私たちは、エネルギー生産のための燃料を化石燃料から木質燃料に転換することにより、気候目標と世界の生物多様性の双方が損われることがないよう、強く求めます。
何十年もの間、紙や木材製品の生産者は副産物として各工程の廃棄物を電気や熱を生成してきました。この利用は木材の新たな伐採につながるものではありません。しかし近年では、バイオマスエネルギーのために樹木を伐採し、木材の大部分を燃料に転用することで、森林に蓄えられるはずの炭素を放出させてしまう誤った動きが見られます。
このような新たな伐採の結果、当初は炭素排出量が大幅に増加し「炭素負債」が発生します。バイオマスエネルギー利用のために伐採される木が増えれば増えるほど、炭素負債は増加します。森林を再生し化石燃料を代替することで、最終的にはこの炭素負債が解消されるかもしれません。しかし、森林再生には時間がかかり、世界が気候変動を解決するためにはその時間的猶予がありません。数多くの研究が示しているように、このような木材の燃焼は数十年から数百年にわたって温暖化を悪化させることになります。木材が石炭や石油、天然ガスに取って代わる場合も同様です。
その理由は基本的なことです。森林は炭素を蓄えているからです。乾燥した木材の重量の約半分は炭素です。木材が伐採されて燃やされる場合、エネルギーを供給する前に伐採と加工の過程で、伐採された樹木の多く、しばしば半分以上は、化石燃料を代替することもなく炭素を大気に追加しながら、失われます。また、木材の燃焼は炭素効率が悪く、エネルギーとして燃やされる木材は、化石燃料よりも多くの炭素を排出します。全体的にみて、木材の燃焼により1キロワット時の熱や電気を生成に対して、化石燃料を使用した場合の2~3倍の炭素が大気中に放出される可能性が高いです。
今後数十年の地球温暖化の悪化は危険です。この温暖化は、増加する森林火災や海面上昇、猛暑などによる、より直接的な被害を意味します。また、氷河の急速な消失と永久凍土の融解、世界の海の温度上昇と酸性化により、さらに永続的な被害がもたらされることを意味します。これらの被害は、今から数十年後に炭素を除去したとしても、元に戻ることはありません。
木材を燃やすための政府の補助金は、二重の気候問題を引き起こしています。なぜなら、この誤った解決策が本当の炭素排出量削減策に取って代わっているからです。企業は、化石エネルギーの使用を、真に温暖化を減少させる太陽光や風力に転換する代わりに、温暖化を悪化させる木材に転換しています。
日本やフランス領ギアナなどでは、木材を燃やして電気を作るだけでなく、パーム油や大豆油を燃やす案も出ています。これらの燃料を生産するためには、パーム油や大豆の生産を拡大する必要があり、その結果、炭素密度の高い熱帯林が皆伐され、その炭素吸収量が減少し、大気中に炭素が放出されます。
森林や植物油の管理に関する「持続可能性の基準」では、これらの結果を変えることはできません。持続可能な管理とは、木材の伐採後に最終的に炭素負債が返済されることを可能にしますが、それまでの数十年、あるいは数百年の温暖化の進行を変えることはできません。同様に、植物油の需要が増加すれば、食糧需要の高まりによってすでに発生している世界的な森林伐採の圧力にさらに拍車がかかるでしょう。
土地利用変化に起因する排出について、国が責任を負うことは望ましいことではありますが、それだけでは木材を燃やすことをカーボンニュートラルとみなす法律による問題を解決できません。なぜなら、発電所や工場で木材を燃やすための法律で定められたインセンティブを変えるものではないからです。同様に、ディーゼル燃料の使用からの排出について各国が責任を負っているという事実は、ディーゼルがカーボンニュートラルであるという誤った理論に基づいており、トラックがより多くのディーゼルを燃やすことを奨励する法律を是正することにはなりません。国家の気候変動に関する責任を定める条約も、それを果たすための各国のエネルギー関連法も、それらが奨励する諸活動が気候に与える影響を正確に捉えたものでなければなりません。
今後の皆様のご決断は、世界の森林に大きな影響を与えます。もし世界のエネルギー需給量のさらに2%を木材から供給するとしたら、木材の商業伐採量を2倍にする必要があるからです。ヨーロッパでのバイオマスエネルギーの増加は、すでに欧州における森林の伐採量の大幅な増加につながっていることを示す十分な証拠があります。これらのアプローチは、熱帯諸国に森林をもっと伐採するよう促すモデルを作り出し、世界が目指してきた森林に関する合意を台無しにします。既に数か国は森林伐採を増加させると表明しています。
このような悪影響を回避するために、各国政府は、自国産であれ他国産であれ、木材を燃焼させることに対する既存の補助金やその他のインセンティブを廃止しなければなりません。欧州連合は、再生可能エネルギー基準や排出量取引制度において、バイオマスの燃焼をカーボンニュートラルとみなすのをやめる必要があります。日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要があります。また、米国では、新政権が気候変動に関するルールを作り、地球温暖化を抑制するためのインセンティブを生み出す中で、バイオマスをカーボンニュートラルまたは低炭素として扱わないようにする必要があります。
樹木は、生きているものの方がそうでないものより気候と生物多様性の両方にとって価値があります。将来のネット・ゼロ・エミッション目標を達成するために、貴政府は森林を燃やすのではなく、森林の保全と再生に努めるべきです。
ピーター・レイヴン(ミズーリ植物協会 名誉会長、米国ミズーリ州セントルイス)
その他の主唱者
第2回放射能ごみ焼却と木質バイオマス発電を考えるオンラインシンポジウム
菅政権は「2050年カーボンニュートラル」
かこつけて原発再稼働をもくろむものです。
福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出の10月中決定は、
じめとする強固な反対の声により見送ら
な時期に判断」
除染土(汚染土)
市小
一方、
ス発電計画の発覚など、
汚染水の海洋放出と汚染木を燃やす木質バイオマス発電や放射能ご
ラマキという意味では全く同じものです。
改めて、放射能バラマキそのものの「放射能ごみの焼却」と「汚染木を燃やす木質バ
イオマス発電」について、
を図る一助として、シンポジウムをオンラ
ぜひご参加ください。
◆ご参加希望の方は以下のフォームからお申し込み下さい。
https://forms.gle/
木バス発電所の地域から
地元「羽毛山」に住んでいて感じること
羽毛山へ来て約50年。今迄冬の日当たりが悪いことを除けば駅には近いし、高速へも
5分、スーパーも近い便利な所だと思っていました。先日、やはり便利が良いというこ
とで羽毛山に住もうと考えた家族がいたそうですが、千曲川の両側に立つ二つの煙突か
ら出ている煙を見て子供が小さいし、毎日この煙を浴びるのは…と考えて断念したとい
う話を聞きました。
テレビによく出ているニュース解説者が、バイオマス発電はよいことだと発言してい
たとか。推し進める側の話だけ鵜呑みにして本質的なことは勉強不足カナ? と思いました。
地球規模で温暖化が進み各地で大災害が毎年起き、北極、南極の氷は解け三十年後に
は北極の氷はほとんど解けるとテレビでやっていました。そしてあちこちの海岸線もな
くなるとも…。
又、最近あの東北大震災を忘れたのか原発再稼働の話があちこちで聞かれるようにな
りました。東北ではバイオマスから出る放射能に関連して裁判も行われています。
もちろん羽毛山の火力発電、ゴミ焼却場の大気汚染も気になりますが、羽毛山橋も60
年以上経っているとか。毎日大量の木材を乗せて何台もの大型トラックが通っていて、
2019年の台風19号の様な大型台風が来たら大丈夫なのかと心配にもなります。
今後二十年は昼夜を問わず燃やし続ける予定だとか。東信地方だけの木材で足りるの
か。あちこちでハゲ山になったり、東北地方から汚染された廃材や山の木が持ち込まれ
ないか。
子や孫の為にも一番近くに住んでいる私達は 皆で監視して行かなければならないと
思っています。
羽毛山住民