木質バイオマス発電

信州の 山なみ見わたす 陽だまりの町・東御市、ここに木質火力発電所ができるって?!

書簡「森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」

 2021年2月11日、42の国と地域の500名以上の科学者が、日本政府、米国政府、欧州議会EU)、
韓国政府にあてて、「森林バイオマス発電はカーボンニュートラルではない」と主張する書簡を提出
しました。
    2017年9月や、2018年1月14日にも、世界の科学者たちが同様の書簡を提出していますが、その時は
欧州議会にだけ宛てた書簡でした。しかし、今回の書簡は、日本政府や米国政府、韓国政府にも宛てた
ものです。
 世界にますます森林バイオマス発電市場が広がり、科学者たちは更に危機感を募らせているものと思
われます。
 
 以下、FoE  Japan の ブログから
 

 書簡では、バイオマスの発電利用により森林が伐採され、森林に蓄えられている炭素が大気中に放出されること、森林の再生には時間がかかり、数十年から数百年にわたって気候変動を悪化させること、バイオマスの発電利用は化石燃料を使用した場合の2〜3倍の炭素を放出する可能性があることが指摘されています。また、各国政府は「気候変動対策」として、バイオマスを燃焼することに対する補助金インセンティブにより、実際は気候変動を悪化させていること、そして真の排出削減のためには、森林を燃やすのではなく、保全と再生に努めるべきことが述べられています。

 日本では、2012年にFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が開始されて以降国内のバイオマス発電事業が急増しています。

 FIT認定量は、2020年9月には821.5万kWで、そのうち747万kWが一般木質バイオマスおよび農作物残さ(輸入木質ペレット・木質チップ、PKSなど)やバイオマス液体燃料(パーム油など)による発電となっています。同時点で、FIT制度下で稼働している発電事業数は446件、認定されている事業数は709件にのぼります。

 大規模バイオマス発電事業は、輸入燃料に頼っています。例えば木質ペレットの輸入量は、2012年には約7.2万トンでしたが、2019年には161.4万トンに急増しています。

 書簡は、日本のFIT制度について「日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要がある」と言及しています。

以下、日本語の仮訳です(原文はこちら)。


森林のバイオマスエネルギー利用に関する書簡<仮訳>

2021年2月11日

米国大統領 バイデン様、
欧州委員会委員長 フォン・デア・ライエン様、
欧州理事会議長 ミシェル様、
日本国内閣総理大臣 菅様、
大韓民国大統領 文様


 
 
 
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 下記に署名した科学者および経済学者は、米国、欧州連合、日本、韓国が、2050年までにカーボンニュートラルを達成するために野心的な目標を発表したことに称賛の意を表します。森林の保全と再生こそが、この目標を達成するための重要な手段であり、同時に地球規模の生物多様性の危機への対処に役立つものです。私たちは、エネルギー生産のための燃料を化石燃料から木質燃料に転換することにより、気候目標と世界の生物多様性の双方が損われることがないよう、強く求めます。

 何十年もの間、紙や木材製品の生産者は副産物として各工程の廃棄物を電気や熱を生成してきました。この利用は木材の新たな伐採につながるものではありません。しかし近年では、バイオマスエネルギーのために樹木を伐採し、木材の大部分を燃料に転用することで、森林に蓄えられるはずの炭素を放出させてしまう誤った動きが見られます。

 このような新たな伐採の結果、当初は炭素排出量が大幅に増加し「炭素負債」が発生します。バイオマスエネルギー利用のために伐採される木が増えれば増えるほど、炭素負債は増加します。森林を再生し化石燃料を代替することで、最終的にはこの炭素負債が解消されるかもしれません。しかし、森林再生には時間がかかり、世界が気候変動を解決するためにはその時間的猶予がありません。数多くの研究が示しているように、このような木材の燃焼は数十年から数百年にわたって温暖化を悪化させることになります。木材が石炭や石油、天然ガスに取って代わる場合も同様です。

 その理由は基本的なことです。森林は炭素を蓄えているからです。乾燥した木材の重量の約半分は炭素です。木材が伐採されて燃やされる場合、エネルギーを供給する前に伐採と加工の過程で、伐採された樹木の多く、しばしば半分以上は、化石燃料を代替することもなく炭素を大気に追加しながら、失われます。また、木材の燃焼は炭素効率が悪く、エネルギーとして燃やされる木材は、化石燃料よりも多くの炭素を排出します。全体的にみて、木材の燃焼により1キロワット時の熱や電気を生成に対して、化石燃料を使用した場合の2~3倍の炭素が大気中に放出される可能性が高いです。

 今後数十年の地球温暖化の悪化は危険です。この温暖化は、増加する森林火災や海面上昇、猛暑などによる、より直接的な被害を意味します。また、氷河の急速な消失と永久凍土の融解、世界の海の温度上昇と酸性化により、さらに永続的な被害がもたらされることを意味します。これらの被害は、今から数十年後に炭素を除去したとしても、元に戻ることはありません。

 木材を燃やすための政府の補助金は、二重の気候問題を引き起こしています。なぜなら、この誤った解決策が本当の炭素排出量削減策に取って代わっているからです。企業は、化石エネルギーの使用を、真に温暖化を減少させる太陽光や風力に転換する代わりに、温暖化を悪化させる木材に転換しています。

 

 日本やフランス領ギアナなどでは、木材を燃やして電気を作るだけでなく、パーム油や大豆油を燃やす案も出ています。これらの燃料を生産するためには、パーム油や大豆の生産を拡大する必要があり、その結果、炭素密度の高い熱帯林が皆伐され、その炭素吸収量が減少し、大気中に炭素が放出されます。

 森林や植物油の管理に関する「持続可能性の基準」では、これらの結果を変えることはできません。持続可能な管理とは、木材の伐採後に最終的に炭素負債が返済されることを可能にしますが、それまでの数十年、あるいは数百年の温暖化の進行を変えることはできません。同様に、植物油の需要が増加すれば、食糧需要の高まりによってすでに発生している世界的な森林伐採の圧力にさらに拍車がかかるでしょう。

 土地利用変化に起因する排出について、国が責任を負うことは望ましいことではありますが、それだけでは木材を燃やすことをカーボンニュートラルとみなす法律による問題を解決できません。なぜなら、発電所や工場で木材を燃やすための法律で定められたインセンティブを変えるものではないからです。同様に、ディーゼル燃料の使用からの排出について各国が責任を負っているという事実は、ディーゼルカーボンニュートラルであるという誤った理論に基づいており、トラックがより多くのディーゼルを燃やすことを奨励する法律を是正することにはなりません。国家の気候変動に関する責任を定める条約も、それを果たすための各国のエネルギー関連法も、それらが奨励する諸活動が気候に与える影響を正確に捉えたものでなければなりません。

 今後の皆様のご決断は、世界の森林に大きな影響を与えます。もし世界のエネルギー需給量のさらに2%を木材から供給するとしたら、木材の商業伐採量を2倍にする必要があるからです。ヨーロッパでのバイオマスエネルギーの増加は、すでに欧州における森林の伐採量の大幅な増加につながっていることを示す十分な証拠があります。これらのアプローチは、熱帯諸国に森林をもっと伐採するよう促すモデルを作り出し、世界が目指してきた森林に関する合意を台無しにします。既に数か国は森林伐採を増加させると表明しています。

 このような悪影響を回避するために、各国政府は、自国産であれ他国産であれ、木材を燃焼させることに対する既存の補助金やその他のインセンティブを廃止しなければなりません。欧州連合は、再生可能エネルギー基準や排出量取引制度において、バイオマスの燃焼をカーボンニュートラルとみなすのをやめる必要があります。日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要があります。また、米国では、新政権が気候変動に関するルールを作り、地球温暖化を抑制するためのインセンティブを生み出す中で、バイオマスカーボンニュートラルまたは低炭素として扱わないようにする必要があります。

 

 樹木は、生きているものの方がそうでないものより気候と生物多様性の両方にとって価値があります。将来のネット・ゼロ・エミッション目標を達成するために、貴政府は森林を燃やすのではなく、森林の保全と再生に努めるべきです。

 ピーター・レイヴン(ミズーリ植物協会 名誉会長、米国ミズーリ州セントルイス

 その他の主唱者

第2回放射能ごみ焼却と木質バイオマス発電を考えるオンラインシンポジウム

 菅政権は「2050年カーボンニュートラルを打ち出しましたが、実態はCO2削減に 

かこつけて原発再稼働をもくろむものです。

 福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出の10月中決定は、地元漁協や自治体などをは

じめとする強固な反対の声により見送られました。しかし、菅政権は依然として「適切

な時期に判断」するとしており、予断を許さない状況にあります。

 除染土(汚染土)についても、飯館村における覆土なしでの野菜栽培実験や、南相馬

市小高区での農地への利用検討などが報じられ、こちらも予断を許さない状況です。

 一方、飯舘村での樹皮を燃やす木質バイオマス発電計画や、伊達市での木質バイオマ

ス発電計画の発覚など、放射能汚染木を燃やす木質バイオマス発電は拡大しています。

汚染水の海洋放出と汚染木を燃やす木質バイオマス発電や放射能み焼却は、放射能

マキという意味では全く同じものです。

 改めて、放射能バラマキそのものの「放射能ごみの焼却」と「汚染木を燃やす木質バ

イオマス発電」について、各地の状況を共有するとともに、連携して各地の運動の強化

図る一助として、シンポジウムをオンラインにて開催します。

 ぜひご参加ください。

 

案内チラシはこちらからダウンロードできます

 

◆ご参加希望の方は以下のフォームからお申し込み下さい。

https://forms.gle/8L8VTyZXBGpbBaus7 

 
放射能ごみ焼却と木質バイオマス発電を考えるオンライン・シンポジウム◆
・日 時  3月6日(土)14時~16時
 
・形式   ZOOMを用いたオンライン・シンポジウム
     申込された方には前日までにZOOM会議室のリンク等をお送りします。
     当日は15分前くらいから会議室を開けます。
 
・プログラム
第一部:放射能ごみ焼却反対大崎住民訴訟について
  放射能ごみ焼却反対大崎住民訴訟の意義と裁判の経緯:松浦健太郎弁護士。
  原告代表挨拶・質疑
第二部:各地からの報告
 ・放射能汚染木を燃やす木質バイオマス発電の問題点(ちくりん舎 青木)
 ・群馬県渋川市木質バイオマス発電の現状
 ・田村バイオマス発電訴訟の現状
 ・東御市バイオマス発電の現状
 ・福島県における汚染隠ぺいと「復興」(ふくしま連絡会 和田)
  質疑応答(Q&A)/まとめ
 
主 催 放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会
    フクロウの会(老朽原発を考える会)
    ちくりん舎(NPO法人市民放射能監視センター)
    木質バイオマス発電チェック市民会議(長野県・東御市

木バス発電所の地域から

         地元「羽毛山」に住んでいて感じること

                                                                       

  羽毛山へ来て約50年。今迄冬の日当たりが悪いことを除けば駅には近いし、高速へも

5分、スーパーも近い便利な所だと思っていました。先日、やはり便利が良いというこ

とで羽毛山に住もうと考えた家族がいたそうですが、千曲川の両側に立つ二つの煙突か

ら出ている煙を見て子供が小さいし、毎日この煙を浴びるのは…と考えて断念したとい

う話を聞きました。

 テレビによく出ているニュース解説者が、バイオマス発電はよいことだと発言してい

たとか。推し進める側の話だけ鵜呑みにして本質的なことは勉強不足カナ? と思いました。

 地球規模で温暖化が進み各地で大災害が毎年起き、北極、南極の氷は解け三十年後に

は北極の氷はほとんど解けるとテレビでやっていました。そしてあちこちの海岸線もな

くなるとも…。

 又、最近あの東北大震災を忘れたのか原発再稼働の話があちこちで聞かれるようにな

りました。東北ではバイオマスから出る放射能に関連して裁判も行われています。

 もちろん羽毛山の火力発電、ゴミ焼却場の大気汚染も気になりますが、羽毛山橋も60

年以上経っているとか。毎日大量の木材を乗せて何台もの大型トラックが通っていて、

2019年の台風19号の様な大型台風が来たら大丈夫なのかと心配にもなります。 

 今後二十年は昼夜を問わず燃やし続ける予定だとか。東信地方だけの木材で足りるの

か。あちこちでハゲ山になったり、東北地方から汚染された廃材や山の木が持ち込まれ

ないか。

 子や孫の為にも一番近くに住んでいる私達は 皆で監視して行かなければならないと

思っています。

                               羽毛山住民

 

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大気中の排ガスを監視するリネン

 

木バス通信No.7から 燃料争奪戦の開始と憂い

           燃料争奪戦の開始と憂い 

                           共同代表  今村 輝夫

 

 私の日課は、高校生の孫を八重原から田中駅南口までの送迎から始まる。朝、電車に

乗り遅れないようにとあせる気持ちを抑えて安全運転に努めて木戸坂を下るが、必ず木

バス発電所の煙突を見てしまう。冬の訪れと共に、煙突からの白煙がはっきりと見える

ようになって来た。旧東部町の皆さんも「今朝は冷えるね」の挨拶と共に、見えなかっ

発電所の実像がしだいに目の前に現れて来たと感じているでしょう。

 燃料は松枯れ材が主体で、乾燥木をチップ化して強制燃焼し吐き出す為、水蒸気が見

えず実像が見えなかったが、気温が下がり、発電所の実像があらわになってきた。真冬

はあの煙が北風と共に八重原に向かって来る。あの白い煙が放射能を含んでいることを

忘れてはならない。現時点では「長野県東信地区の間伐木材を燃料とする」と、市もW

P社も明言している。

 10月15日の信毎の記事で不安が高まった、「Fパワー発電所きょう始動」の見出しで

1/5ページと大きく紙面を割いた報道である。塩尻市に完成し稼働を始めた民間出資の

国内最大級の木質バイオマス発電所の記事だ。主に建築角材の端材を燃料として、製材

と買取電力料金で採算の計画で有ったが、記事の内容は、発電能力・地域貢献の記事よ

りも、その規模を維持充足できるかの燃料問題であった。

 記事の大半は林業関係者の談話で、安定供給に不安と問題が大きいという。社長のイ

ンタビューでも「現時点では心配ない。しかし松枯れ材でも使っていく」と明言してい

る。話が違うではないか!

 東御市のWP社(2年前では清水建設)の事前調査の議事録が残っており、塩尻発電

所の計画は承知の上で、塩尻発電所は「建材とならない松枯れ材は使わない。どうぞ東

御で使ってくださいと言っている。ひとまず安心」と記録が残っている。新聞記事での

「Fパワー社も松枯れ材も利用する」との明言は、事実上の燃料争奪戦の戦線布告であ

る。 

 11月15日の週、朝5時のNHKニュースで「福島県双葉町森林組合が、9年ぶりに

活動を再開する、しかし、まだ組合管理の森林の半分以上の面積では、放射線濃度が高

く立ち入れないが活動を再開した」とニュースが流れ、不安がよぎった。

今年、2月福島県郡山市の学習会に参加した時、東京電力は山林の汚染補償までは出来

ないと逃げている、福島県始め原発汚染地域の山林は放置され、手づかずのままであ

る。森林組合は、先祖が孫子の代にと、100年育てた杉、ヒノキなど建築材が一瞬に

して、ゴミとなった、皮肉にもまだ育ち続けている、森林組合は怒り心頭、その絶望感

は痛いほど理解できる、何とか金にできないかと考えるのも理解できる。国は、「バイ

オマス発電の燃料として、高く買い取る」となだめているらしい。 

 子供たちの為にも、「風化させてはならない」「戦いを続けなければならない」と弱

る老体に言い聞かせた。

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白い煙が目立つようになった木バス発電所 

 

第4回木バスサロン 低線量内部被曝について学ぶ

 11月27日、今年最後の木バスサロンでの学習を「低線量内部被曝」をテーマにして

いました。

 以下、その概略です。  

 

 放射線ガンマ線(~数百メートル)ベータ線(~1メートル)アルファ線(~45ミ

リメートル)などがある。身体の外から瞬時に高線量の放射線を浴びてDNAがズタズタ

に破壊されるのが外部被曝であり、ほぼガンマ線による被曝である。それに比べ放射性

微粒子を食物や呼吸とともに体の中に取り入れてしまい、細胞が至近距離で継続して放

射線に直撃されるのが、内部被曝。3種類の放射線を体内で出し、当り続けるので外部

被曝よりずっと大きな被曝被害をもたらす。

 内部被曝でのベータ線アルファ線による分子切断では、間違ったつなぎ直しが起き

数年かかり体調不良に陥る危険性が外部被曝の100~1000倍ともいわれる。低線

放射線が慢性的に細胞に当たり続けると、非常に少量の放射線の吸収であっても免疫

系全体に障害を与えるので、内部被曝の方がはるかに危険であるとする、ペトカウ効

果、バイスタンダー効果などもある。

 チェルノブイリ原発事故のデータなどからも放射線にここまでなら安全というしきい

値はない

 

 低線量被曝の基本的なことを学んだ後、放射能被曝に関する紙芝居の紹介がありまし

た。

 「ちっちゃい声」  作 アーサー・ビナード  絵 丸木位里・俊 

 

【 参 考 】

 1973年から始まった原爆症認定却下取消訴訟の中で、日本で初めて入市被爆者を原爆

症と認定したのは、2008年の大阪高裁です。ここで、重要なことは、放射線の高線量被

曝と低線量被曝が及ぼす影響は異なっており、残留放射線による低線量放射線の内部被

曝は非常に危険なものだと、判決文の中で指摘していることです。

 

阪高裁判決文より抜粋(判決文311頁から313頁) 

平成20年5月30日判決言渡

平成18年(行コ)第58号 原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件

 

4.低線量放射線による被曝の影響に関する指摘

 (1) ドネルW.ボードマンの指摘(1992年)

 ケンブリッジ及びマサチューセッツの原子放射線研究センターのドネルW.ボードマン

は、著書放射線の衝撃 低線量放射線の人間への影響(被爆者医療の手引き)(肥田

舜太郎訳)において、以下の指摘をしている。

        略

(2) ジェイM.グールドらの指摘(1994年)

 「放射線と公衆衛生に関する研究計画」の責任者であるジェイ M. グールドとベンジ

ャミンA.ゴルドマンは、共著「死にいたる虚構 国家による低線量放射線の隠蔽」

(1994肥田舜太郎ほか訳)において、以下のような指摘をしている。

 

   広島原爆の経験に基づく高線量域から外挿した(機械的に当てはめた)線量反応関係

(被曝量の増加に応じて、被害が増加する相関性)に基づいて、フォールアウト(放射

性降下物)や原子力施設の放射能漏れによる低線量の危険は極端に過小評価され無視す

ることができるほど小さいと信じられてきた。しかし、医療被曝や原爆爆発のような高

線量瞬間被曝の影響は、まず最初に、細胞中のDNAに向けられ、その障害は酵素によっ

て効果的に修復されるが、この過程は、極低線量での障害に主として関与するフリーラ

ジカル(遊離基)の間接的、免疫障害的な機序とは全く異なっている。このことはチェ

ルノブイリ原発の事故後のミルク中のヨウ素131被曝による死亡率が、ヨウ素131のレベ

ルが100pCi以下で急激に上昇しているのに、高線量レベルになると増加率が平坦になっ

てしまうことから裏付けられた。チェルノブイリの経験から言えば、この過程は最も感

受性のある人々に対する低線量被曝の影響を1000分の1に過少評価していることを示し

ている。

 チェルノブイリ事故以後の健康統計から計算すれば、低線量の線量反応曲線は、低線

量域で急峻なカーブの立ち上がりを示す上方に凸の曲線又は対数曲線であり、線量反応

関係の対数カーブは、ペトカウ博士らが行った1971年の放射性誘発フリーラジカルの細

胞膜障害の実験結果と一致する。低線量放射線による慢性的な被曝は、同時には、ほん

のわずかなフリーラジカルが作られるだけであり、これらのフリーラジカルは血液細胞

の細胞膜に非常に効率よく到達し、透過する。そして、非常に少量の放射線の吸収にも

かかわらず、免疫系全体の統合性に障害を与える。それと対照的に、瞬間的で強い放射

線被曝は、大量のフリーラジカルを生成し、そのためぶつかり合って、無害な普通の酸

素分子になってしまうため、かえって細胞膜への障害は少ない。

 チャールス・ワルドレンと共同研究者たちも、極めて低い線量の放射線の場合、高線

量を用いた通常の方法やエックス線装置からの瞬間照射の場合よりも200倍も効果的に

突然変異が生じることを発見した(体内摂取されたベータ線による持続的な被曝は、外

部からのエックス線瞬間被曝に比べて細胞膜への障害が千倍も強い)。彼らのデータ

は、線量反応曲線は直線であり、低線量の影響についても高線量のデータによる直線の

延長線上で評価できるとしてきた伝統的な化学的ドグマと対立している。

 ストロンチウム90は、化学的にはカルシウムに似ているため、成長する乳幼児、小

児、思春期の男女の骨髄の中に濃縮される。一度骨中に入ると、免疫担当細胞が作られ

る骨髄に対し、低線量で何年にもわたって放射線を照射し続ける。ストック博士と彼の

協力者は、1968年、オスローがん病院で、わずか10~20mradの少線量のエックス線が

おそらくフリーラジカル酸素の産生を通じて骨髄造血細胞にはっきりした障害を作り出

すことを初めて発見した。このことが、直接的には遺伝子を傷つけ、間接的にはがん細

胞を見つけて殺す免疫の機能を弱め、骨肉腫、白血病その他の悪性腫瘍の発育を導く。

 ストロンチウム90などによる体内ベータ線被曝で最も効率よく生産されるフリーラジ

カル酸素は、低比重コレステロールを酸化して動脈に沈着しやすくし血流を阻害して心

臓発作を誘導すると考えられており、発がん性と同様に冠動脈性心疾患の一要因なのか

もしれない。   

 

(参考文献:「放射線の衝撃 低線量放射線の人間への影響」訳者 肥田舜太郎

「死にいたる虚構 国家による低線量放射線の隠蔽」肥田舜太郎、斉藤紀 共訳  

 PKO法「雑則」を広める会 発行)         

第3回木バスサロン リネン吸着法について(10月23日) 報告

 

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リネンを設置するチェック市民会議

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二階ベランダにもリネン




 「リネン吸着法の優位性」について学ぶ

  チェック市民会議は、市民が生み出した測定法「リネン(麻布)吸着法」により大気中に放出されるセシウム微粒子を監視していこうと、東御市の木質バイオマス火力発電所が稼働する前の2019年11月から「リネン吸着法」の測定を行っています。

 木質バイオマス火力発電所は2020年7月15日から、市民への説明もなく稼働されてしまいました。今年11月から、稼働後の「リネン吸着法」による測定を行うにあたって、改めて「リネン吸着法」について学習を深めることにしました。

 

 ちくりん舎・青木一政氏が行った「子ども脱被ばく裁判学習会」資料と「大崎市汚染廃棄物試験焼却・リネン吸着法結果説明」時の資料の二つを中心にして、「リネン吸着法」の優位性について学びました。

 より詳しい説明や図説等は、ちくりん舎のホームページをご覧ください。

 URL: http://chikurin.org/

  • 飛灰(大気中粉塵)には微小粒子が大量に含まれる。大気汚染防止法にある「ばいじん」には、浮遊粒子状物質(SPM)という粒径P.M10(10㎛)を中心としたばいじと、いわゆるP.M2.5と呼ばれる粒径P.M0.5(0.5㎛)を中心とした微小粒子状物質と呼ばれるばいじんの二種類がある。
  • セシウムはばいじん粒子(すす)の表面に凝着する。よって、セシウム量は微小粒子の表面積で考えることが重要。セシウムの大部分は全体の60%に当たる1.0㎛以下の粒子に凝結している。
  • バグフィルターの粒径1~0.2㎛の粒子捕捉率は0~90%。つまりバグフィルターでは微小粒子状物質はほとんど捕捉できない。
  • 浮遊塵・浮遊ガスを捕捉する機器にエアーダストサンプラーがあるが、0.3㎛以下の微粒子はブラウン運動(微粒子の不規則な運動)により「拡散」するので、その性質を利用すると、エアーダストサンプラーよりもむしろ「リネン吸着法」の方が捕捉率は高い。
  • P.M2.5などの微小粒子は肺の深部、肺胞まで到達し沈着するので、気管支部に沈着するよりも人体への影響が大きい。まして、表面にセシウムが凝結している微粒子が滞留し続けるならば、内部被ばくし続けるということになる。(「広島原爆『黒い雨』体験者の肺にウラン残存」2015.6.8 毎日新聞記事)
  • リネン吸着法によって捕捉したセシウムを検査した結果、86%が非水溶性だった。水溶性のセシウムより人体にははるかに危険なので、驚く。

 

 

 

 

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畑にもリネン