木質バイオマス発電

信州の 山なみ見わたす 陽だまりの町・東御市、ここに木質火力発電所ができるって?!

公開質問状の回答を分析する 

   【木質バイオマス発電所に関する公開質問の結果について(20.03.29)】

                    木質バイオマス発電チェック市民会議

はじめに

木質バイオマス発電チェック市民会議は、羽毛山工業団地に建設中の木質バイオマス発電所について、東御市長選挙立候補予定者及び東御市議会議員に公開質問をした。2020年3月11日に配布し、25日までに回答を依頼した。真摯に回答していただいた方々に感謝したい。

(1)回答数などについて

1)東御市長立候補予定者

東御市長立候補予定者については花岡利夫氏から回答があり、若林幹雄氏からは回答がなかった。花岡利夫氏は質問項目には答えない形で回答を寄せた。木質バイオマス発電は経済産業省の認可事業であり、各関係法令及び基準、条例並びに協定を遵守しながら事業展開するから心配は当たらないとしている。若林立候補予定者の見解は不明である。

 回答で選択肢を選択せず自由意見を述べるケースが見られた。「ア、大いに心配」であるから「検証が必要」であるのか「イ、多少心配」であるから「検証が必要」であるのかという例である。この点、推測をせず無選択として分類することとした。

2)東御市議会議員

議員総数16名中回答者は6名である。回答率は37.5%である。

(2)質問に対する回答について

1)火事、爆発等の事故による被害

「協定に基づき対応と認識している」(F)、「万全を期して事業」(B)は希望として、

「ウ、心配していない」のであるが、「はじめてのことで心配」(E)は、東御市環境をよくする条例は「火力発電所を想定していない」という率直な表明であると私たちは考える。

2)ダイオキシン等有害物質を含有するPM2.5(微小粒子状物質)放出による健康被害

大気汚染防止法に基づく」(F)「高性能バグフィルターを168基つけ排ガス基準よりはるかに抑制」(B)(E)で「ウ、心配していない」。しかし「PM2.5に関して、県内12か所で常時監視している。環境基準(長期、短期)、注意喚起基準はあるが、局所的な大気汚染評価は難しい」ので「イ、多少心配」(A)していることに着目したい。また、ろ過式集じん装置(バグフィルター)は不十分である点は認識されていない。

3)各種薬品を含む排水・排液による千曲川汚染・生態系破壊

「河川管理者の了解」(F)、「上田建設事務所及び県環境課も承知」(B)と、「ウ、心配していない」が、「定期的に測定し公表」(C)もある。この点「エ、わからない」「人体に有害な物質を含むものは使用しないと説明があったと記憶、モニタリングなどたくさん行ってほしい」(E)を重視したい。鉛、ヒ素及びその化合物等、銅、亜鉛含有物等は認識されていない。

4)高温排水・排液や空冷装置の排熱による水温・気温の上昇

「ウ、心配していない」「環境保全に努めるとしている」(B)が、同じく「協定により責任は明確」(F)としているが、「エ、わからない」を選択している。無選択の回答は「検証が必要」としている。排出ガス温度172℃、排水側溝排水37℃は認識されていない。

5)設備へ大量の水を供給するために水資源に及ぼす影響(渇水など)

全回答が「ウ、心配していない」である。「水量は1日あたり67m3。水源水量の半分程度」(B)は、市水道局の説明である。

 6)発電所と木質チップ工場の稼働時に発生する騒音について

環境をよくする条例に騒音の項目があるが、「エ、わからない」が多数の回答であることは注目に値する。「工場地域の基準に則っているはず」(A)、環境基準を守ることが必要(C)とあり、信州ウッドチップ木質チップ製造プラント機能は「東54、西65、南69、北64dB」で届出されている点は、環境対策係から説明されていない。

7)不適切な森林伐採により自然災害(台風時の土砂崩れ等)が発生しやすい状況となる

「地域森林組合等と充分に調整」(F)、「森を守るために間伐材」(E)、「東信地域の間伐材など搬入が限定」「木材の出所が担保される」(B)と「ウ、心配していない」、「森林計画に基づいた伐採」(A)「区域森林計画にもとづき県の許可による計画的伐採」(C)と「ウ、心配していない」。信州ウッドパワーは森林計画に直接的対応していない点は見逃せない。

8)放射性物質含有木材を燃料とすることによって生じる放射性物質の再拡散、及び健康被害

「適切に対応されているものと認識」(F)、「そのような木材は燃やす対象になっていない」(E)と「ウ、心配していない」。「対策を申し入れている」(A)「放射能測定をおこない公表するよう申し入れ」(C)ていると放射能汚染を懸念する回答がある。

9)焼却灰(主灰・飛灰)の処理の問題(「有価物」として扱う等)

「法に基づき適切に処理される」(F)(E)ので「ウ、心配していない」が、一部の議員からは「焼却灰の再生利用では、放射性セシウム検査を行い県の環境基準に基づいて行う。焼却灰の表面線量率を測定したり、敷地境界における空中線量率の測定を定期的に実施する」(B)と、信州ウッドパワー㈱の見解が回答されている。無選択では「((8)と同じ)(対策を申し入れている)(A)、「放射能測定をおこない公表するように会社側に求めています」(C)とある。放射能濃度の測定については触れられていない。

10)建設着工前に東御市民が十分に理解できるような説明および意見聴取がされたか

「ア、された」「地元区への説明は2回行われている」(F)は回覧と誤認。「地元区への説明や近隣区長への情報提供」(B)は説明不足を認識していない。

11)「説明会開催を求める」署名が1753筆(市長提出分:2019.10.15集計)集まったにもかかわらず、東御市が市民説明会を開催しなかったことについて

「ア、妥当」との回答では「地元区の説明会がなされてきた」(F)は説明不足を認識していない。「関係省庁のヒヤリング」や「環境をよくする条例に関する協定」(B)は市民に対する説明のことではない。「市民会議の皆さんや特に地元の皆さんが納得していただいていないとすれば」(E)「イ、開催すべきだった」とは適切な回答である。

12)今後、稼働する前に市民説明会を開催する必要はあると思いますか

「これまで地元区を中心とする説明会を行ってきました」(B)は説明不足の認識がない。「イ、必要である」とした「一番の地元の皆さんがほとんど理解などされていないとしたらする必要もあるかと考えますが」、「3月8日の説明会で分かっていただいたとすればよいのではありませんか」(E)は、「必要ない」「必要である」の選択に揺らぎが見られる。

13)「特定事業または開発事業 協定書」の内容についてどのように思いますか

「特別問題はない」(B)が、「ア、十分である」でも「定めにないことは両者で協議していただくことになっているから。市民の方や環境のモニタリングなど課題がでたら協議されるものと解釈します」(E)は「十分である」「不十分である」の選択に揺らぎが見られる。

14)市民・東御市・事業者の三者による「環境保全のための協定」が必要であると思うか

「イ、必要である」市民は市長とすること」(F)とは二者協定で誤認がある。同じ「イ、必要である」が「市民というと広くなる。関係している地元区ということでよいと思う」(B)と「環境保全のための協定」の必要性を回答している。「現在両者で行なわれているので、課題が出た時はすぐ協議してもらう」(E)は環境をよくする条例協定書(二者協定)で十分であるとの回答である。

15)「東御市環境をよくする条例」(平成16年度制定)は火力発電所の建設を想定した

条例であると思いますか

「ア、思う」は「すべてを対象としている」(F)に代表される。「再生可能エネルギー電気事業はH26年に加えられたが(別表2)(4条関係)、当時問題が出始めた太陽光に関して対応した。今後対応していくべきもの」(A)は重視したい回答である。(B)の「イ、思わない」は14)「環境保全のための協定」に整合し、13)と不整合である。

16バイオマス発電事業が満たすべき要件を提言した「バイオマス発電に関する共同宣言」をご存じですか

「知っている」3回答、「知らない」3回答と同数である。共同宣言の「提言6 汚染物質の拡散を伴わないこと」「提言7 環境影響評価が実施され、地域住民への十分な説明の上での合意を取得していること」等の認識を確認したい。

(3)質問に対する回答・各議員について

1)A氏

8設問で選択肢を選んでいない。「検証が必要」「対策を申し入れている」は「心配」の、「基準に則っている」「森林計画に基づいた」は「心配していない」の表明と取れないこともない。他方、はっきり「多少心配」「心配していない」を選択している設問もあり、意図的に無選択としていると判断した。

「(2)PM2.5放出による健康被害」について「イ、多様心配」で「PM2.5に関して、県内12か所(直近に上田局、小諸局があるがPM2.5は観測されていない)で常時監視している 環境基準(長期、短期〈1年平均値が15 μg/m3以下であり、かつ、1日平均値が35 μg/m3以下であること〉)と、注意喚起基準はあるが、局所的(信州ウッドパワー㈱付近)な大気汚染評価は難しい」との回答を重視したい。

また「(15)環境をよくする条例は火力発電所を想定しているか」について、「再生可能エネルギー電気事業はH26年に加えられたが(別表2)(4条関係)、当時問題が出始めた太陽光に関して対応した。今後対応していくべきもの」との回答を確認しておきたい。

2)B氏

東御市環境をよくする条例で協定を締結しているので」「心配していない」が、「(6)発電所と木質チップ工場の騒音」についてのみ「エ、わからない」と揺らぎが見られる。「(2)バグフィルター」「(5)渇水」「(9)焼却灰の処理」は聞き取りの結果であろう。バグフィルターはPM2.5を完全には集じんできないこと、焼却灰の表面線量率の測定では放射能濃度を測定できないことについては見識がない。東御市環境をよくする条例の協定書(二者協定)を「ア、十分である」「特別問題はない」としながら、三者による「環境保全のための協定」が市民(「関係している地元区」)として「イ、必要である」としている点、さらに「(15)環境をよくする条例は火力発電所想定している条例」と「イ、思わない」の回答には揺らぎが見られる。

3)C氏

8設問で選択肢を選んでいない。「検証が必要」「環境基準を守ることが必要」は「心配」の、「区域森林計画にもとづき県の許可による計画的伐採」は「心配していない」の表明と取れないこともない。他方、はっきり「多少心配」「心配していない」を選択している設問もあり、意図的に無選択としていると判断した。

4)D氏

 回答にまったく揺らぎはみられない。また自由意見もまったくない。

5)E氏

木質バイオマス発電は「はじめてのこと」で「予想の範囲では何ともいいようがない」ため「イ、多少心配」(1)「ウ、心配していない」((2)PM2.5、(5)渇水、(7)自然災害、(8)放射性物質の拡散、(9)焼却灰の処理)、「エ、わからない」((3)千曲川汚染、(4)水温・気温の上昇、(6)騒音)と揺らぎが見える。「万全な対策がとられている」「人体に有害な物質を含むものは使用しない」等という説明があり、「モニタリングなどたくさん行ってほしい」と全般的に懸念の表明がされている。

市民に対して「イ、説明されたとは言えない」(10)ので市民説明会は「イ、開催すべきだった」(11)し「イ、必要である」(12)と説明不足を認めている。「環境保全のための協定」は環境をよくする条例協定で「ア、十分である」(13)ので「ア、必要ない」(14)としているが「実際に稼働してみて懸念されていることが発生したらしっかり検討しなくてはいけない」と揺らぎが見える。

6)F氏

環境をよくする条例協定書により「心配していない」のであるが、「(4)排熱による水温・気温の上昇」と「(6)発電所と木質チップ工場の騒音について」に「エ、わからない」を選択して揺らぎが見える。また「(12)開発事業協定書」で「十分である」としているが、「市民は市長とすること」と二者協定として「(13)環境保全のための協定」は必要としている。(12)と(13)の回答に揺らぎが見える。しかも「(15)東御市の環境をよくする条例」は火力発発電所の建設を想定した条例と「思う」としており(14)と揺らぎが見える。

(4)総括

1)「私たちの認識・疑問」への回答について

「私たちの認識・疑問」(1)から(9)への回答は「ウ、心配していない」が多数である。議員総会等で企業と売却に向けて協議を進めているなどの説明を受けてきたが、木質バイオマス火力発電所について統一した回答が見られない。環境をよくする条例で協定を締結しているので、万全を期して事業にあたってほしいというところであろう。 

市長立候補予定者花岡利夫氏は「木質バイオマス発電事業は、経済産業省で認可された事業で」「各関係法令及び規準条例並びに協定を遵守しながら事業展開する」と回答しているが、私たちは環境対策面での懸念を払拭できない。市民説明会の開催を求める。

2)市民説明会について

「市民説明会」(10)について開催「ア、された」「イ、されたとは言えない」及び「開催しなかったこと」(11)は「ア、妥当」「イ、開催すべきだった」が同数である。さらに「今後、市民説明会を開催」(12)は無選択の自由意見「住民説明会が必要」を勘案すると「ア、必要ない」「イ、必要である」も同数であることから、改めて市民説明会の開催を求める。

3)地元について

商工労政係は羽毛山工業団地の地積を地元として説明したことから、議員は、地元は羽毛山区と認識している。火力発電所環境負荷を考えた時、地元は羽毛山区だけではない。地元は少なくとも八重原地区、田中地区等に及ぶと考える。

4)「環境をよくする条例」と「環境保全のための協定」と「火力発電所を想定」について

F議員は、開発事業協定は「ア、十分である」と評価、環境をよくする条例は火力発電所を含む「すべてを対象」としながらも、環境保全のための協定が「イ、必要である」と揺らいでいる。B議員も開発事業協定は「ア、十分である」としながら、環境をよくする条例は火力発電所を想定していると「イ思わない」と回答、環境保全のための協定は「イ、必要である」と(13)と(14)(15)の間の回答に揺らぎがある。D議員に揺らぎはない。E議員は「ア、十分である」「ア、必要ない」と揺らぎはないが課題は二者で「協議される」としている。A議員とC議員は、逆に「イ、不十分である」「イ、必要である」と揺らぎはない。

「特定事業または開発事業協定書」(13)「環境保全のための協定」(14)「環境をよくする条例は火力発電所を想定」(15)の回答に揺らぎが見えることは、木質バイオマス火力発電所の環境対策の認識不足である。「今後対応していくべきもの」(A)という認識を求めたい。

おわりに

私たちは今回の公開質問から、以下について提案したい。

東御市及び信州ウッドパワー㈱は市民説明会を開催すること

②環境対策係は木質バイオマス発電について、市議会議員に統一した説明を行うこと

東御市環境をよくする条例は火力発電所を想定していないため、環境対策係は特定事業届出及び開発事業届出の不備を検討すること

東御市議会は「東御市環境をよくする条例」を火力発電所を想定して改正すること

 私たちは、今回の公開質問状において、木質バイオマス火力発電所が招来するであろう「想定外の事態」の「予見可能性」を指摘してきた。私たちは、今後も火力発電所環境負荷が及ぶ関係地元地区市民とともに木質バイオマス火力発電所を誘致した自治東御市及び信州ウッドパワー㈱に「絶対的な安全性の確保」について説明を求めたい。

                                 以 上