第3回青木一政氏講演会開催
講演会 「 木質バイオマス発電は本当にエコか
~ 環境と健康への影響を考える ~ 」
10月19日、発電所に一番近い公民館、大日向地区にある北御牧公民館にて、NPO法人市民放射能監視センターの副理事長、青木一政氏の講演会を行いました。
台風19号の被害が川や道路にまだ生々しく、断水も続いていた大日向地区でしたが、そんな大変な状況であるにもかかわらず、約60名の方の参加があり、青木氏のお話に耳を傾けて下さいました。
北御牧公民館はわかりづらい場所にあったのですが、建設地の地元の方たちが今まで以上に多く集まって下さいました。家族連れの方も見え、子どもさんを会場の後ろで遊ばせながら参加したり、年配の方も「知り合いに聞いて来た、これは大変なことだ」と思って来たと、最後まで青木氏のお話しに聞き入っていました。
ノーニュークス・アジア・フォーラムの話から始めた青木氏
今年の9月21日から25日まで、台湾で「第19回ノーニュークス・アジア・フォーラム」が開催されました。台湾は、アジアの中で、脱原発を先頭に立って進めている国です。
青木一政氏は、その大会に日本代表の一人として参加されました。福島事故以降、福島内外の汚染の実態を調べ、それを伝えたり、またそういう実態の中でいかに人々の「被ばく」を低減させるかということを目的とし、市民放射能監視センターの活動を続けてこられました。
青木氏は、このフォーラムに参加することで、世界の人たちにフクシマの「今」を伝えたいという思いでいっぱであったと言います。
木質バイオマス発電の講演内容に入る前に、このフォーラムでの様子が紹介され、
ノーニュークス(No Nukes 非核)・アジア(Asia)に向けて、市民が、自治体が、国
がどう動いているかという世界の状況を伝えて下さいました。
詳しくは、以下のHPをご覧ください。
*ちくりん舎 http://chikurin.org/wp/
*ノーニュークス・アジア・フォーラム https://www.nonukesasiaforum.org/japan/
共同代表が挨拶、そしてこれまでの経過報告
共同代表の川端真由美さんが、台風被害の片づけに忙しい中、集まって下さった市民の皆さんに感謝の言葉を述べ、これまでの活動の経過報告を行いました。
2018年11月の信濃毎日新聞の記事と12月の東御市広報で、羽毛山地区に信州ウッドパワー(100%清水建設の子会社)が、木質バイオマス発電の建設を始めたということを知り、「木質バイオマス発電ってなに?」、「火力発電だったら、問題があるんじゃないの?」という問題意識を持った女性たち4人が、学習することを目的に「木質バイオマス発電を学ぶ会」を結成。
そして、日本で一番この問題に詳しい「ちくりん舎」の青木一政氏に講演を依頼し、4月14日に第1回講演会「木質バイオマス発電とはなにか」を開催。
と、報告し始めました。
この報告を聞き、最初の青木氏講演会から第3回の講演会までの期間が、半年あまりであったことに気がついた私は、びっくりしました。
この間、実に多くのことが起こり、多くの方たちに出会い、助けていただきながら、ここまで来たことに、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
〈出会った方たち〉
@東御の市民を心配し、駆けつけてきてくれた飯山市の市民(2018年夏、発電計画を
中止にさせた市民)
@講演会に駆けつけてくれたり、受付や宣伝等に協力してくれた友人・知人
@「これは大変なことだ」と手作りのビラを作ってまき始めた市民
@ミニ学習会を開き、周りに伝えていってくれた市民
@市民説明会要望署名集めに奔走してくれた市民
@「市民説明会要望書」や要望署名を一緒に東御市に提出したり、「説明会は開かな
い」という拒否の回答を一緒に受け取った市民
@何度も情報公開請求をし、水面下で進められた経過も含め、市民に情報を提供して
くれた市民
@そして何より、お忙しい中、東京や神奈川から東御市に駆けつけ、講演をしたり
貴重なアドバイスをして下さる青木一政氏や「ちくりん舎」スタッフの皆さん
この方たち以外にも、わずか半年あまりの間にたくさんの方の力を寄せていただきました。そのおかげで、「学ぶ会」だけでなく、「木質バイオマス発電チェック市民会議」ができ、その会の中で4チームが活動する「今」があることを、共同代表の経過報告を聞く中で、確認することができました。
〈4月14日の講演会開催以後の経過説明〉
4月の講演会では、たとえ微量であっても放射能汚染された木材を燃やせばバグフィルターをすり抜けた微小粒子に付着したセシウムは大気に放出されることや、焼却灰や処理水はどこへ行くのか、といった木質バイオマス発電の問題を学ぶことができました。そこで『学ぶ会』は5月、東御市に対し「市民説明会の開催を求める要望書」を提出しましたが、市長は「議会は承認」し「地元への周知も行った」から「市民説明会は開くつもりはない」と回答しました。
私たちは市の回答書を調べる中で、市の全ての議員が、「国の申請が下りるまでは公表しないでほしい」という企業と市の意向を承認し、市民に知られないように協力してきたことや、区の限られた役員への説明が「地元への周知」であったことを知りました。(地元区へは情報を流さないようにとの資料も)
そこで「全東御市民に対する説明会」の開催を求める署名活動を展開し、二か月間で1300筆を超える署名を集めて9月3日、市に提出しました。(その後も継続した署名は9月30日現在、1600筆を越えました)
当初(2014~2015年)の事業主体は(株)東京パワーテクノロジー(東京電力グループ)で、発電規模は1万kw、燃料集材圏は群馬や新潟県にも及ぶものでしたが、すでに燃料(間伐材)の調達が難しくなっていたこともあってか、その後事業主体は(株)清水建設に変わりました。現在建設中の「信州ウッドパワー」(清水建設の100%子会社)の発電規模は1,990kwとFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)で40円/kwの利益が20年間保証される規模になり、燃料集材圏は放射能汚染の懸念がある地域を含む東信地域としています。
私たちは10月3日、市から再度「市民説明会は開かない」という回答を受け取りました。理由は「事業主体は市ではなく企業」で、「環境に影響を及ぼさない事業と認識」しているという無責任極まりないものでした。
私たちは市が何もしないまま進む木質バイオマス発電所に対し、市民がチェックをかけて行くしかないと、8月24日、『木質バイオマス発電チェック市民会議』を起ち上げました。
そして今日、10月19日に、地元の北御牧公民館で青木氏の3回目の講演会「木質バイオマス発電は本当にエコなのか」を開催することになったわけです。
青木氏が各地で指導・実施している「リネン吸着法検査」(自分たちの手で大気中の放射性微粒子を測定する)をスタートさせます。発電所が稼働する前と稼働後の大気の状況を調べて比較するためですが、市民が監視していることを業者や東御市に対して示す意味も込めた「市民の自主測定活動」です。
合わせて燃料にするという東信地方の立ち木の放射能検査も開始しました。
聴いて下さい、地元からの声
第一回青木講演会から参加し続け、学習を深めていった羽毛山地区の住民の方からの訴えがありました。
その方は、言います。地域では初め、「木質チップ工場が建設されるそうだ」と聞かされていた。火力発電所が建設されるということはまったく知らされていなかったと。
そのうち、バイオマス発電所ができると聞いて、原発に比べ全く安全なものだろうから大丈夫だろうと、単純に理解していた。
でも、学習を進めるうちに、これは簡単に行政の言いなりになって、イエスと言っていていいものだろうかと、疑問に思うようになった。
旧東部町クリーンセンターの煙と火力発電所の煙が合体して、羽毛山地区に降り注ぎ堆積していくと考えたら、恐ろしくなった。
今でさえ、クリーンセンターの煙は臭くてたまらない。子や孫にはきれいな空気の下で育ち生活してほしい。
その上、この発電所の誘致が「住民に知られないように」と、水面下で進められていたことが市の議事録に書かれていたので、とてもびっくりした。
そして、最後にこう付け加えました。
先日の台風で崩落した田中橋、羽毛山橋はその田中橋より古いのです。
ここを毎日10トントラックが10台も通ることになるのですと。
講演
「木質バイオマス発電は本当にエコか? ~ 環境と健康への影響を考える ~」
【パワーポイント資料の目次】
1)福島は「アンダーコントロール」か?
2)日本政府・福島県は原発事故の現実を隠蔽することに全力を注いでいる
4)全国木質バイオマス発電所一覧地図 急速に増加・大型化(7万5000kwクラスも)
5)木質バイオマス発電業者のホンネは 燃料の安定化が課題 山林はバイオマスの畑
6)輸入燃料チップ価格上昇 国内では木材チップ生産が急増
上山の工場で爆発 民家に金属片(河北新報)
バイオマス発電所の騒音や臭気で苦情 対策求める請願、議会採択(京都新聞)
日本パルプ商事焼却灰出荷時に不正(日本経済新聞)
8)2018.5可決 2019.4施行「森林経営管理法」
バイオマス発電のために森林を強制的に取り上げる
国有林まで伐採権を民間業者に売り渡す! 再造林の義務は不明記
11)除染・廃棄物技術協議会 東京電力の旗振りでごみ処理が新たなビジネスに
廃棄物関連WG[第6期]メンバー企業30社
12)除染・廃棄物技術協議会 バイオマス発電も「放射能ごみ処理」の柱に
ゴミ焼却炉・セメント工場・バイオマス発電所は放射能ばらまき施設に位置付け
13)福島県における森林除染をめぐる攻防
「福島森林再生事業」で奥山間伐を推進。毎年47億円の予算
(2012年 環境省「今後の森林除染の在り方に関する当面の整理について」)
15)放射能汚染された木材はどこへ行ったのか?
16)焼却灰の主灰と飛灰
17)飛灰には微小粒子が大量に含まれる
19) 燃やせば飛灰の放射能は100倍濃縮される
20)無垢の木材を燃やしてもダイオキシンは発生する
21)不完全燃焼・de novo 合成によるダイオキシンの発生
22)木質チップの大半は建築廃材(解体材、廃材)
有害物質は問題ないか?
23) 福島県甲状腺検査の最新情報(2019.6.30まで)
25)福島原発事故による乳幼児死亡率の増加
26)乳児の複雑新奇形手術 福島原発事故後に全国で増加
28)チェルノブイリの経験だけでは語れない
-日本での低線量被ばくの特別の危険性ー
29)焼却炉やバイオマス発電所に設置されているバグフィルターとは
30)バグフィルターで「99.9%捕捉できる」というが?
31)バグフィルターは漏らしながら集じんする
32)バグフィルターの不具合等の事例
ユーザーは破損が「よく起きる」と回答
33)粉じん粒径と体内への取り込み
34)細かい粒子は肺の奥まで侵入する
35)吸入摂取の危険性
36) セシウムはばいじん粒子の表面に付着している
37)微小粒子は表面積で考えなければならない
38)大気中の誇りの放射能を測る~一般的な方法
39)リネン吸着法-市民のアイディアで測定できることを実証
40)リネン吸着法測定結果
42)「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル」
43)アメダス上田、東御、立科の位置と風方向(年間)(四季)
44)局地循環流
45)年間風向を元にした拡散予測(上田、東御、立科に着目)
46)接地逆転層により汚染した空気は滞留する
47)リネン吸着法で監視する場合の設置案
48)リネン吸着法による監視の考え方
49)排水にも問題がないか監視が必要
50)「再生不可能なバイオマス発電」
51)バイオマス発電における2つの潮流
『バイオマス本当の話』(泊みゆき著)を参考に
*青木一政氏のお話は90分を越えるものでしたが、ほとんどの方が最後まで食い入る
ように聞き入っていました。
*最新刊の『絶望の林業』の中には、「再生不可能なバイオマス発電」という章があ
ります。森林ジャーナリストの田中氏が林業の現場で出会った貴重な証言が取り上
げられています。ぜひ、ご一読を
~ 今、日本の林業現場で何が行われているのか? ~
補助金漬け・死傷者続出・低賃金・相次ぐ盗伐・非科学的な施策
官製〈成長産業〉の不都合な真実
*また今回の講演では、水の問題を、量の問題ではなく、排水・排液の質の問題、
給排水フローの問題として、専門的に解説していただきました。
「リネン吸着検査」を稼働前から実施します
リネン検査チームによる報告
大気中に浮遊する放射性微粒子は、空間線量計では測れません。
p.m2.5などと言われる極小の微粒子は、ホコリを計測する「エアーダストサンプラー」という機器で計測します。
私たちは、市民運動から生まれた「リネン(麻布)吸着法」という検査法で、放射性セシウムなどの微小粒子の拡散を監視します。
稼働前から測定を行い、稼働後の大気の状態と比較します。
全国で100か所以上の「リネン吸着検査」を行っている「ちくりん舎」の指導の下に
リネンを設置し、張り終わったリネンは、「ちくりん舎」のゲルマニウム半導体放射能測定器で計測してもらいます。
〈リネン吸着法の意義〉
①放射性セシウムなどの微小粒子の拡散を監視します。
②市民が監視を行うことで、事業者に対して、汚染木材・チップを使わせない牽制・
抑止をかけます。
③監視を行うことで、市民・協力者の関心を高めていきます。
終わりの言葉
チェック市民会議共同代表の今村輝夫さんが、地元の住民として、まとめの言葉を
述べて下さいました。
今村さんは八重原地区の区長をしていましたが、木質バイオマス発電建設について
一度も東御市から説明を受けたことがないと常々おっしゃっています。
福島の人たちが、見せかけの除染によって次々に避難指定を解除され、賠償を打ち
切られ、半ば強制的に帰還させられたり、公営住宅に避難している自主避難者が懲罰
的に家賃を2倍にさせられ、追い出されようとしていることを取り上げ、国は福島を
見捨てるのかと、怒りをあらわにしました。
そして、放射能ごみの基準を8000Bq/kg以上にまで引き上げ、それ以下は一般廃棄
物扱いにしているのなら、そういう環境省の方針の下に行われる木質バイオマス発電
事業は危険ではないかと訴え、東御市に対し説明会を求めた市民が、二度も開催を拒
否されたということは、われわれ東御市民も東御市に見捨てられたということかと投
げかけて、終わりの言葉とされました。