放射能汚染の「見える化」のために
ちくりん舎による「ハウスダストのセシウム濃度測定による放射能汚染調査」
NPO法人市民放射能監視センター(ちくりん舎)は、原発事故10年後の放射能汚染の
実態を「見える化」するために、福島県内外の家庭153ヵ所のハウスダストのセシウム
濃度測定を行いました。
今回の調査では参考として浪江町の帰還困難区域の3ヶ所の屋内と、南相馬・避難20
ミリシーベルト基準撤回裁判原告の家屋のハウスダストを測定し、東日本各地のハウス
ダストと比較することを行いました。
私たち「木質バイオマス発電チェック市民会議」にも、長野県東信地方のハウスダス
トを調査したいという依頼があり、12ヶ所の家庭の掃除機のゴミパックをちくりん舎に
送り、調査に協力しました。153件全部の調査結果がちくりん舎のホームページでご覧
になれますので、ぜひ、のぞいて下さい。(http://chikurin.org/wp/?5982)
今回の調査では、当然人が住んではいけないとされている帰還困難地域と同等のレベ
ルの汚染が、南相馬市や飯館村にもあることがわかりました。ハウスダストが、一般ご
みとして廃棄してはいけない指定廃棄物(8000Bq/kg以上)に相当する家が5ヶ所、放射
性物質のリサイクル基準(放射性物質として扱わなくてよい基準、100Bq/kg以下)以上
の場所が福島県、新潟県、宮城県、茨城県、千葉県、東京都で発見されました。
また、ちくりん舎ではセシウムの水溶性試験も行い、ハウスダスト中のセシウムのう
ち75%程度が非水溶性であることも突き止めました。ハウスダストは屋内の空気に浮か
んでいる細かいチリなので、吸い込むと肺の奥に沈着し、非水溶性であると肺内部から
排出されづらく、長期に渡り内部被ばくすることになります。
ハウスダストや南相馬市住民の尿検査結果とその分析、中間貯蔵施設見学などを載せ
た「福島原発事故10年の現実 ~ 続く汚染と内部被ばく 放射能ばらまきを止めるため
に」という新しいブックレットも出ました。
世界中の科学者がバイオマス発電を批判!
第2回放射能ごみ焼却と木質バイオマス発電を考えるオンラインシンポジウム
3月6日、第二回オンラインシンポジウムは、3時間を超える長丁場と
なりました。
ぜひ、ご覧下さい。
書簡「森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」
書簡では、バイオマスの発電利用により森林が伐採され、森林に蓄えられている炭素が大気中に放出されること、森林の再生には時間がかかり、数十年から数百年にわたって気候変動を悪化させること、バイオマスの発電利用は化石燃料を使用した場合の2〜3倍の炭素を放出する可能性があることが指摘されています。また、各国政府は「気候変動対策」として、バイオマスを燃焼することに対する補助金やインセンティブにより、実際は気候変動を悪化させていること、そして真の排出削減のためには、森林を燃やすのではなく、保全と再生に努めるべきことが述べられています。
日本では、2012年にFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が開始されて以降国内のバイオマス発電事業が急増しています。
FIT認定量は、2020年9月には821.5万kWで、そのうち747万kWが一般木質バイオマスおよび農作物残さ(輸入木質ペレット・木質チップ、PKSなど)やバイオマス液体燃料(パーム油など)による発電となっています。同時点で、FIT制度下で稼働している発電事業数は446件、認定されている事業数は709件にのぼります。
大規模バイオマス発電事業は、輸入燃料に頼っています。例えば木質ペレットの輸入量は、2012年には約7.2万トンでしたが、2019年には161.4万トンに急増しています。
書簡は、日本のFIT制度について「日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要がある」と言及しています。
以下、日本語の仮訳です(原文はこちら)。
森林のバイオマスエネルギー利用に関する書簡<仮訳>
2021年2月11日
米国大統領 バイデン様、
欧州委員会委員長 フォン・デア・ライエン様、
欧州理事会議長 ミシェル様、
日本国内閣総理大臣 菅様、
大韓民国大統領 文様
下記に署名した科学者および経済学者は、米国、欧州連合、日本、韓国が、2050年までにカーボンニュートラルを達成するために野心的な目標を発表したことに称賛の意を表します。森林の保全と再生こそが、この目標を達成するための重要な手段であり、同時に地球規模の生物多様性の危機への対処に役立つものです。私たちは、エネルギー生産のための燃料を化石燃料から木質燃料に転換することにより、気候目標と世界の生物多様性の双方が損われることがないよう、強く求めます。
何十年もの間、紙や木材製品の生産者は副産物として各工程の廃棄物を電気や熱を生成してきました。この利用は木材の新たな伐採につながるものではありません。しかし近年では、バイオマスエネルギーのために樹木を伐採し、木材の大部分を燃料に転用することで、森林に蓄えられるはずの炭素を放出させてしまう誤った動きが見られます。
このような新たな伐採の結果、当初は炭素排出量が大幅に増加し「炭素負債」が発生します。バイオマスエネルギー利用のために伐採される木が増えれば増えるほど、炭素負債は増加します。森林を再生し化石燃料を代替することで、最終的にはこの炭素負債が解消されるかもしれません。しかし、森林再生には時間がかかり、世界が気候変動を解決するためにはその時間的猶予がありません。数多くの研究が示しているように、このような木材の燃焼は数十年から数百年にわたって温暖化を悪化させることになります。木材が石炭や石油、天然ガスに取って代わる場合も同様です。
その理由は基本的なことです。森林は炭素を蓄えているからです。乾燥した木材の重量の約半分は炭素です。木材が伐採されて燃やされる場合、エネルギーを供給する前に伐採と加工の過程で、伐採された樹木の多く、しばしば半分以上は、化石燃料を代替することもなく炭素を大気に追加しながら、失われます。また、木材の燃焼は炭素効率が悪く、エネルギーとして燃やされる木材は、化石燃料よりも多くの炭素を排出します。全体的にみて、木材の燃焼により1キロワット時の熱や電気を生成に対して、化石燃料を使用した場合の2~3倍の炭素が大気中に放出される可能性が高いです。
今後数十年の地球温暖化の悪化は危険です。この温暖化は、増加する森林火災や海面上昇、猛暑などによる、より直接的な被害を意味します。また、氷河の急速な消失と永久凍土の融解、世界の海の温度上昇と酸性化により、さらに永続的な被害がもたらされることを意味します。これらの被害は、今から数十年後に炭素を除去したとしても、元に戻ることはありません。
木材を燃やすための政府の補助金は、二重の気候問題を引き起こしています。なぜなら、この誤った解決策が本当の炭素排出量削減策に取って代わっているからです。企業は、化石エネルギーの使用を、真に温暖化を減少させる太陽光や風力に転換する代わりに、温暖化を悪化させる木材に転換しています。
日本やフランス領ギアナなどでは、木材を燃やして電気を作るだけでなく、パーム油や大豆油を燃やす案も出ています。これらの燃料を生産するためには、パーム油や大豆の生産を拡大する必要があり、その結果、炭素密度の高い熱帯林が皆伐され、その炭素吸収量が減少し、大気中に炭素が放出されます。
森林や植物油の管理に関する「持続可能性の基準」では、これらの結果を変えることはできません。持続可能な管理とは、木材の伐採後に最終的に炭素負債が返済されることを可能にしますが、それまでの数十年、あるいは数百年の温暖化の進行を変えることはできません。同様に、植物油の需要が増加すれば、食糧需要の高まりによってすでに発生している世界的な森林伐採の圧力にさらに拍車がかかるでしょう。
土地利用変化に起因する排出について、国が責任を負うことは望ましいことではありますが、それだけでは木材を燃やすことをカーボンニュートラルとみなす法律による問題を解決できません。なぜなら、発電所や工場で木材を燃やすための法律で定められたインセンティブを変えるものではないからです。同様に、ディーゼル燃料の使用からの排出について各国が責任を負っているという事実は、ディーゼルがカーボンニュートラルであるという誤った理論に基づいており、トラックがより多くのディーゼルを燃やすことを奨励する法律を是正することにはなりません。国家の気候変動に関する責任を定める条約も、それを果たすための各国のエネルギー関連法も、それらが奨励する諸活動が気候に与える影響を正確に捉えたものでなければなりません。
今後の皆様のご決断は、世界の森林に大きな影響を与えます。もし世界のエネルギー需給量のさらに2%を木材から供給するとしたら、木材の商業伐採量を2倍にする必要があるからです。ヨーロッパでのバイオマスエネルギーの増加は、すでに欧州における森林の伐採量の大幅な増加につながっていることを示す十分な証拠があります。これらのアプローチは、熱帯諸国に森林をもっと伐採するよう促すモデルを作り出し、世界が目指してきた森林に関する合意を台無しにします。既に数か国は森林伐採を増加させると表明しています。
このような悪影響を回避するために、各国政府は、自国産であれ他国産であれ、木材を燃焼させることに対する既存の補助金やその他のインセンティブを廃止しなければなりません。欧州連合は、再生可能エネルギー基準や排出量取引制度において、バイオマスの燃焼をカーボンニュートラルとみなすのをやめる必要があります。日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要があります。また、米国では、新政権が気候変動に関するルールを作り、地球温暖化を抑制するためのインセンティブを生み出す中で、バイオマスをカーボンニュートラルまたは低炭素として扱わないようにする必要があります。
樹木は、生きているものの方がそうでないものより気候と生物多様性の両方にとって価値があります。将来のネット・ゼロ・エミッション目標を達成するために、貴政府は森林を燃やすのではなく、森林の保全と再生に努めるべきです。
ピーター・レイヴン(ミズーリ植物協会 名誉会長、米国ミズーリ州セントルイス)
その他の主唱者
第2回放射能ごみ焼却と木質バイオマス発電を考えるオンラインシンポジウム
菅政権は「2050年カーボンニュートラル」
かこつけて原発再稼働をもくろむものです。
福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出の10月中決定は、
じめとする強固な反対の声により見送ら
な時期に判断」
除染土(汚染土)
市小
一方、
ス発電計画の発覚など、
汚染水の海洋放出と汚染木を燃やす木質バイオマス発電や放射能ご
ラマキという意味では全く同じものです。
改めて、放射能バラマキそのものの「放射能ごみの焼却」と「汚染木を燃やす木質バ
イオマス発電」について、
を図る一助として、シンポジウムをオンラ
ぜひご参加ください。
◆ご参加希望の方は以下のフォームからお申し込み下さい。
https://forms.gle/
木バス発電所の地域から
地元「羽毛山」に住んでいて感じること
羽毛山へ来て約50年。今迄冬の日当たりが悪いことを除けば駅には近いし、高速へも
5分、スーパーも近い便利な所だと思っていました。先日、やはり便利が良いというこ
とで羽毛山に住もうと考えた家族がいたそうですが、千曲川の両側に立つ二つの煙突か
ら出ている煙を見て子供が小さいし、毎日この煙を浴びるのは…と考えて断念したとい
う話を聞きました。
テレビによく出ているニュース解説者が、バイオマス発電はよいことだと発言してい
たとか。推し進める側の話だけ鵜呑みにして本質的なことは勉強不足カナ? と思いました。
地球規模で温暖化が進み各地で大災害が毎年起き、北極、南極の氷は解け三十年後に
は北極の氷はほとんど解けるとテレビでやっていました。そしてあちこちの海岸線もな
くなるとも…。
又、最近あの東北大震災を忘れたのか原発再稼働の話があちこちで聞かれるようにな
りました。東北ではバイオマスから出る放射能に関連して裁判も行われています。
もちろん羽毛山の火力発電、ゴミ焼却場の大気汚染も気になりますが、羽毛山橋も60
年以上経っているとか。毎日大量の木材を乗せて何台もの大型トラックが通っていて、
2019年の台風19号の様な大型台風が来たら大丈夫なのかと心配にもなります。
今後二十年は昼夜を問わず燃やし続ける予定だとか。東信地方だけの木材で足りるの
か。あちこちでハゲ山になったり、東北地方から汚染された廃材や山の木が持ち込まれ
ないか。
子や孫の為にも一番近くに住んでいる私達は 皆で監視して行かなければならないと
思っています。
羽毛山住民
木バス通信No.7から 燃料争奪戦の開始と憂い
燃料争奪戦の開始と憂い
共同代表 今村 輝夫
私の日課は、高校生の孫を八重原から田中駅南口までの送迎から始まる。朝、電車に
乗り遅れないようにとあせる気持ちを抑えて安全運転に努めて木戸坂を下るが、必ず木
バス発電所の煙突を見てしまう。冬の訪れと共に、煙突からの白煙がはっきりと見える
ようになって来た。旧東部町の皆さんも「今朝は冷えるね」の挨拶と共に、見えなかっ
た発電所の実像がしだいに目の前に現れて来たと感じているでしょう。
燃料は松枯れ材が主体で、乾燥木をチップ化して強制燃焼し吐き出す為、水蒸気が見
えず実像が見えなかったが、気温が下がり、発電所の実像があらわになってきた。真冬
はあの煙が北風と共に八重原に向かって来る。あの白い煙が放射能を含んでいることを
忘れてはならない。現時点では「長野県東信地区の間伐木材を燃料とする」と、市もW
P社も明言している。
10月15日の信毎の記事で不安が高まった、「Fパワー発電所きょう始動」の見出しで
1/5ページと大きく紙面を割いた報道である。塩尻市に完成し稼働を始めた民間出資の
国内最大級の木質バイオマス発電所の記事だ。主に建築角材の端材を燃料として、製材
と買取電力料金で採算の計画で有ったが、記事の内容は、発電能力・地域貢献の記事よ
りも、その規模を維持充足できるかの燃料問題であった。
記事の大半は林業関係者の談話で、安定供給に不安と問題が大きいという。社長のイ
ンタビューでも「現時点では心配ない。しかし松枯れ材でも使っていく」と明言してい
る。話が違うではないか!
東御市のWP社(2年前では清水建設)の事前調査の議事録が残っており、塩尻発電
所の計画は承知の上で、塩尻発電所は「建材とならない松枯れ材は使わない。どうぞ東
御で使ってくださいと言っている。ひとまず安心」と記録が残っている。新聞記事での
「Fパワー社も松枯れ材も利用する」との明言は、事実上の燃料争奪戦の戦線布告であ
る。
11月15日の週、朝5時のNHKニュースで「福島県双葉町の森林組合が、9年ぶりに
活動を再開する、しかし、まだ組合管理の森林の半分以上の面積では、放射線濃度が高
く立ち入れないが活動を再開した」とニュースが流れ、不安がよぎった。
今年、2月福島県郡山市の学習会に参加した時、東京電力は山林の汚染補償までは出来
ないと逃げている、福島県始め原発汚染地域の山林は放置され、手づかずのままであ
る。森林組合は、先祖が孫子の代にと、100年育てた杉、ヒノキなど建築材が一瞬に
して、ゴミとなった、皮肉にもまだ育ち続けている、森林組合は怒り心頭、その絶望感
は痛いほど理解できる、何とか金にできないかと考えるのも理解できる。国は、「バイ
オマス発電の燃料として、高く買い取る」となだめているらしい。
子供たちの為にも、「風化させてはならない」「戦いを続けなければならない」と弱
る老体に言い聞かせた。